ジョナス・メカスの日記から


Oona in Utah and Advice from Matisse, April 3, 2012

「絵画に一生を捧げたいと思うなら、舌を切ることから始めるべきである」アンリ・マティス

1975年7月/8月


長女ウナが雪の斜面で橇に乗っている写真を映しながら、メカスは「ユタのウナ」と微かに震える声で言う。唐突に一枚の古ぼけた紙が映る。そこには上のような内容の言葉が印刷されている。唐突に木の床の上で毛繕いしている猫が映る(ノラに似ている)。娘の写真、マティスの言葉、そして目の前の猫。


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A Visit to Lithuania, April 4, 2012

1977年、母の90歳の誕生日の折に、リトアニアの古い家を訪ねた、、
その時リトアニアのテレビ局が撮影した未編集のフィルムが見つかった。


1977年、55歳のジョナス・メカスは妻と幼い娘ウナを伴って故郷の母の元を訪ねた。ごく短期間の訪問だったようだ。代表作『リトアニアへの旅の追憶』(1972年)を彷彿とさせる映像が、まるでマティスの助言に従うかのように、無音で淡々と流れる。最後におそらくメカスが片手でややぎこちなく弾いているチュルリョーニスのピアノ曲が映像に被る。