シナノキの花の芳香


家裏のシナノキ(科の木, Japanese linden or Japanese lime, Tilia japonica)。効用


シナノキの花と近縁のオオバボダイジュの花があちこちで咲きはじめた。目には見えない甘い香りの空間が町のあちこちに生まれている。数日前からわが家の周辺も同じ甘い香りに包まれるようになった。窓を開けると甘い香りが流れ込んでくる。家裏の雑木林で細長い幹をすうーっと伸ばして立っているまだ若いシナノキが淡黄色の小花をたくさんつけていた。去年も咲いていたはずだが、なぜか、花を見た記憶も、甘い香りの記憶もない。シナノキの花の甘い香りは、当然のことながら、ニセアカシアとも、オオヤマレンゲとも、バイカウツギとも違う。シナノキ独特の甘い香りと言うしかないが、ニセアカシアほどしつこくなく、オオヤマレンゲほど軽やかではなく、バイカウツギほど鋭くはない。その中ではニセアカシアに近い。シナノキの花からはファルネソール(farnesol)という香り成分が抽出されるが、もちろん、花の芳香は複数の成分が混合したもので、一つの化学的成分に帰せられるものではない。ところで、シナノキはクローバーやニセアカシアと並ぶ主要な蜜源植物であるが、植栽面積や蜂蜜採取量には、年度によって大きな変動がある。特に蜂蜜採取量に関しては、シナノキが最も多いという説も流布しているが、そもそも統計は存在せず、養蜂業者の自己申告に頼っているのが現状のようだ。


参照