先日、川崎に行く途中で築地場外市場商店街に立ち寄った。どこに行っても近所を散歩するようにしか歩けない私の目を引いたものは、商店の店先や食堂の裏口付近に無造作に置かれた商売を支える使い込まれた各種の道具だった。そして特に目を引いたのは、魚河岸水神様の境内に咲く昇藤(ルピナス)、魚の荒に群がる鴎、灰色の鉄棚に一鉢だけ忘れられたようにあった篝火花(シクラメン)、そしてバケツに植えられた朝鮮連翹(レンギョウ)だった。美味そうな食堂はいくつもあったが、食事をする時間的余裕はなかった。買い物も浅蜊の佃煮一袋だけだった。