大きな背中

[:H500]


日曜日の朝、公園の東屋で涼んでいたNさん(九十一歳)と世間話。「暑いね」「ここは涼しい」 Nさんは自力で車椅子から下りて東屋の椅子に腰を下ろし、話し終わると自力で立ち上がり車椅子に戻った。「もう長くない」が口癖のNさん。十九歳のときに半島からこの列島に渡って来て以来、七十五歳まで身を粉にして働いた。大阪、東京、そして札幌。「脳梗塞で働けなくなって、この有様だ」 一昨年奥様を亡くされた。「寂しいね」「いやあ、寂しいことはない。もうすぐ、俺も逝くから」と言って笑った。気がつけば、去年の今頃と同じ会話を繰り返していた。