ノラとノラの子
母親になったノラ（2013年07月06日）
ノラは近所の或る家の庭で六匹の子を産んだ。驚いたその家の人は放っとくことはできなかった。かといって、自分で飼うこともできなかった。熟慮の末にその六匹の子猫を親戚や知人に頼んで引き取ってもらった。ノラはそのことを知らなかった。ある日外出から戻ると、六匹の子は姿を消していた。いくら呼んでも返事がない。どこを探しても見つからない。マサオの家まで行ってみたが、無駄だった。マサオは呑気に「ノラ、久しぶりだな。痩せたんじゃないか」と声をかけてきたが、ノラは相手にしなかった。
その後もノラは毎日悲しげな声を上げながら我が子を探しまわっていた。そんなノラが不憫でならず、見るに見かねたその家の人は意を決して子猫を引き取ってくれた或る人に事情を話し理解を得て、六匹のうちの一匹を再びノラの元に戻してやった。一週間ほど前に、ノラがノラによく似た黒白の子を連れてわが家の前を横切るのを見かけた。ノラは自分が産まれた廃庭の物置にその子を連れて行った。暑い日には物置から出て、傍の白樺の根方の木陰で二匹寄り添って寝ている。
