橋の上で

公園内を流れる川にかかる橋の上で神妙な面持ちの老父婦とすれ違った。何故か奥さんは六つ切り大の写真を左手に持っていた。私には裏側しか見えず、何が写っているのかは分からなかった。橋の上から上流の景色を撮影して振り向くと、反対側の欄干に軽くもたれるようにして、手にしていた写真を顔のすぐ横に掲げた奥さんを、旦那さんはスマホで撮影していた。大写しの白いマルチーズの顔が目に飛び込んできた。愛犬の遺影ではなく、遺影の愛犬と散歩する老夫婦がそこにいた。