想起が想起を呼び

昨日のエントリー「感情と時間」に寄せられた美崎薫さんのコメント中「子どものときのことはぜったいに忘れない」という言葉が引き金になって、私は映画『ベルリン・天使の詩』にまつわる思い出を書いた。非常に拙い文章とは言えない断片的な記録にすぎなかったが、つい今しがた『横浜逍遥亭』の最新エントリー「ベルリン・天使の詩」で中山さんの陰影深く滋味豊かなベルリン体験記の最後に『ベルリン・天使の詩』が登場していて本当に嬉しかった。しかもあの詩がドイツ語で引用されているではないか。私が学生たちと何度も何度も口ずさんだ一節が。

中山さんはベルリンを肌で体験していた。しかも東ベルリンも。その肌で感じた空気の緊張感が直に伝わって来るような見事な文章に触れて、私はより一層、私の『ベルリン・天使の詩』体験を鮮明に想起することができた。映画の細部が蘇ってきた。そして私はかなり惚れ込んでいたその映画の脚本を下敷きにした小説を書いたことを思い出した。すっかり忘れていたのに。あの映画は哲学も秘めたポエジーに溢れた映画だった。私は「壁」をさまざまに変奏しながら哲学をやや前面に押し出した格好の詩的小説みたいなものを夢中になって書いたのだった。あの原稿の束はどこに行ってしまったのだろう。明日探してみよう。