日常の神話化

2006年11月2日、大浦信行監督『9.11-8.15日本心中』上映会後の懇親会で、今福龍太さんと奄美自由大学談義に花が咲いたとき、自然と私の口をついて出たのは、日常生活を「神話」化する方法、という言葉だった。「歴史」ではなく、それに対抗する「時の形象」としての多様な「神話」の重要性は、映画『9.11-8.15日本心中』の最重要モチーフでもあった。

昨日の朝日新聞朝刊でも報じられたポロックの作品売却記事が気になっていて、ネットで検索したらasahi.comの記事がひっかかった。

米現代美術の代表的な画家ジャクソン・ポロック(1912〜56年)の作品「No.5,1948」が約1億4000万ドル(約163億8000万円)で売却されたと、ニューヨーク・タイムズ紙が2日、報じた。
「ポロックの作品に164億円 史上最高額か」(『asahi.com』2006年11月04日01時17分)

高額の売却事実はどうでもいい。この時期に「ポロック」、あのアクション・ペインティングのポロックの名が私の記憶のどこかを刺激する引き金になったような気がしていた。Wikipediaの「ポロック」を覗いてみたら、

かねてから尊敬していたメキシコ壁画運動の作家たち、たとえばダビッド・アルファロ・シケイロスらの助手を務め、巨大な壁一面というキャンバスとは異なる大きさの空間に、絵筆ならぬスプレーガンやエアブラシで描く現場に衝撃を受ける。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジャクソン・ポロック

という記述に驚いていた。私の記憶の中ではポロックとシケイロスは繋がっていなかった。二十年くらい前にシケイロスの猛犬の絵に衝撃を受けて、それを年賀状のモチーフにしたことを思い出した。

今朝は風太郎の要求(よくある)をのんで、朝の定番の散歩コースとは最初から違うコースを辿った。知らない道ではない。車ではよく通る道。しかし移動する車窓からはもちろん見えないものが次々と目に留る。撮った写真はちょうど30枚で、散歩時間はだいたい三、四十分だから、毎分一枚のペースで写真を撮っているようだ。毎日ほぼそんなペース。今朝は雨上がりの濡れた道路が目に沁みた。

一番引き込まれたのは、近所の空家のペンキが剥がれた壁だった。電気メータがなければ、現代絵画の一枚のようにも見えるかもしれないなと思った。

早朝のわずか三、四十分間の散歩の時間が、私にとっては、正に「神話的時間」のひとつなのだと思っている。