同じ土俵

(これは11月2日の専門演習1の記録。その日は大浦信行監督『9.11-8.15日本心中』上映会前後の慌ただしさのなかで、書くことができなかった。)

先週木曜日の専門演習1では、N君が風邪をぶり返し欠席したため、用意していたレシピは取りやめ、M君と1週間の成果報告を中心に密に話し合った。1週間前には、いままでかなり書きためていたブログを、その方針を根本から改めて「潰し」、新たな方針を立てたところまでだったが、その後の1週間で彼は新たなブログに目を見張るエントリーを書き始めていた。最新のエントリーには、とある先輩ジャーナリストとの出会いとその後の思い切った行動に関する謙虚な記録が好ましい文体で綴られていた。感心した私は彼を激励した。私は私で東京でのHASHI{橋村奉臣}展と美崎薫邸「記憶する住宅」の体験談を熱く語った。

いうまでもなく、大学2年生のM君はこれから未知の部分の多い自分の人生をなんとか切り拓いていかなくてはならない。そして勉学とアルバイト以外にも重たい荷物を背負っている。彼に比べればすでに人生の折り返し地点をとうに過ぎた私は私で残りの人生の未知の部分に切り込んで行かなくてはならない。M君と私の共通の土俵は、未知の世界への取り組み方だ。他の学生たちとの共通の土俵も、それしかない。「1週間で自分を変える」、「1日で自分を変える」という三上ゼミのモットーは、私が学生と同じ土俵でどこまで何が出来るかを試すために、自分をそこへと追い込むための、自分への檄でもある。

M君は、そしてN君も、そんな土俵で歯を食いしばって頑張っている。会えなかったN君はブログの最新エントリーに映画『トレイン・スポッティング』を取り上げていた。昔教材に使ったこともある私も好きな映画だった。ドロップアウトした若者たちの激しく自由で自滅的な人生を観て、あの若者たちの中に今の自分を投げ込んだ時に、一体どんな言葉を吐き、どんな行動をとることができるのか、そして今の人生をどうしたいのか、今週のゼミでN君と話してみたい。