千五百年にわたる日本語のかたちを鳥瞰する

日本語のデザイン (新デザインガイド)

日本語のデザイン (新デザインガイド)

原康史『日本語のデザイン』(美術出版社、2002年)をときどき手に取っては、8頁分が折り畳まれた「日本語のかたち鳥瞰」図をひろげてみる。何も考えず、ただ見るだけでも楽しい。







そこには古代は471年の「金錯銘鉄剣」、503頃の「隅田八幡鏡銘」から現代は石井明朝(MM-OKL)とゴナB写研、OSAKA10ポイント、ビットマップ・フォント(アップルコンピュータ)にいたるまで51種の文字たちが文字通りグラフィカルに並んでいる。それは千五百年におよぶ「日本語のかたち」の変遷の一筋を巧みにレイアウトしたいわば「文字の歴史デザイン」作品にもなっている。色んな「声」が聞こえてくる。色んな「風」が吹いている。永原氏は書いている。

日本語はグラフィカルな言語である。文字が言葉を視覚的にリードしてきたといってもいい。日本語をただ造形としてだけ眺めてみても、文字は視覚言語として立ち上がってくる。やはり言葉はヴィジュアルコミュニケーションなのである。古今和歌集のかなを起点とし、メディアデザインの視点から、前千年と後千年の流れを追った。(8頁)

蛇足ながら、言葉はヴィジュアルコミュニケーションでしかない、わけではないことは言うまでもない。