なんだ坂♪、こんな坂♫

札幌、晴れ。朝から暑い。

おっと、こんなに目を丸くして驚いた表情を見せる猫を初めて見た。近所の塗装屋さんの物置の屋根にて。

トウモロコシたちは順調に育っている。丈70センチくらい。

ふと見上げるとそこに大きな薔薇の花があった。あるお宅の庭から歩道に向かって顔を出している。

その傍には花弁一枚一枚が蝶の翅のように見える花が。未同定。ジャコウアオイ(麝香葵, Musk mallow, Malva moschataだった。

散歩後半、楽しそうに声をかけ合いながら、体を大きく左右に揺らしてペダルを漕いで、私たちの脇を駆け抜けて行くおばちゃんたちがいた。視線が合った瞬間に私が笑顔を向けると、彼女たちも笑顔を返してよこしながら、「なんだ坂♪、こんな坂♫」と大きな声で歌い始め、より一層ペダルを強く踏み込んでいた。「なんだ坂♪、こんな坂♫」? いい感じで自分を励ます、独特の節回しのこの言葉を聴いたのは何十年ぶりだろう。一瞬、音声の記憶の深層に潜って行くような感覚を覚えた...。そしてそれまでは全く意識していなかったが、たしかにその辺りは緩やかな坂道なのだった。おばちゃんたちは少女のように可愛らしかった。(「おばちゃん(おばさん)」という言葉に抵抗を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、私もまた「おっちゃん(おじさん)」なので、悪しからず。)

その直後、移動刃研屋さんに出会った。「刃物とぎ」と印刷されたプレートが前後の窓に外から目立つように置かれていた。車の外では小型の発電機が唸りを上げ、ドアを半開きにした後部座席にはうずくまる人の背中が見えて、キーンという研磨する音が聴こえていた。



Yさん宅で、完熟して黒光りするヤマグワ(山桑, Mulberry, Morus bombycis)の実を20個ほど頂いた。帰宅後すぐに水洗いして口に入れた。甘酸っぱい懐かしい味が舌の上から口中に広がる。桑の実は極小の粒が房状に集まっていて、一粒一粒の表皮、表面は非常に薄いため、指で摘むときにちょっとでも力を入れすぎると破れて指は果汁にまみれる。せっかくなので、ティッシュに「どどめ芸術」(Mulberry Art)してみた。