シノメトンボは逃げなかった

二階のベランダに布団を干していたら、強風で固定用の大きな布団ばさみがはじけてとんで空き家になっている隣家の庭に落ちた。

そのはさみを拾うために、失礼して、庭に入ると、子供の頃はクルマトンボ*1と呼んでいた、ノシメトンボ(熨斗目蜻蛉, Sympetrum infuscatum)の大群が飛び回っていた。剪定された木の細い枝先にそのうちの一匹が止まったところを見計らって撮影した。カメラを近づけても逃げる気配はない。少しずつカメラを近づけては撮影した。接写限界の距離1センチを切っても「何やってんの?」と言いたげに頭を傾げたりはしたが逃げなかった。爺の素敵な笑顔のお陰だろうか。ちなみに、偉いもので、私はちょっとでも外に出るときには第三の目であるカメラを首からぶら下げるのを忘れない。いつどこで何に出会うか分からないからである。そんなワクワク感をもって毎日生きている。家族は呆れるのも通り越して諦めたようである。仕方ない、と。

*1:飛行中に、翅の先端にある黒褐色の斑がくるくる回転しているように見えることに由来する呼び名であろう。