リアリティ

並べない訳にはいかない。重ねない訳にはいかない。

レヴィ=ストロースの庭

レヴィ=ストロースの庭

Derek Jarman's Garden

Derek Jarman's Garden

原発による放射能汚染先進国のイギリスの、原発がすぐそばにある海岸の土地ダンジェネス(Dungeness, いつもデンジャラスDangerousと読んでしまう)で売りに出ていたイカす漁師小屋(beautiful fisherman's cottage)を買い取って、「見晴らし小屋prospect cottage」と名付けて住み始めたジャーマンは、周囲の荒れ地を少しずつ時間をかけて「美しい庭」に仕立て上げた。黙示論的な庭。漁師たちが捨てた、いつも視界に原発の建物が入る荒れ地でジャーマンはまさに「予言的な人生」を生きた。94年にエイズで亡くなるずっと前にいち早くゲイであることをカミングアウトしたジャーマンの生の、性の強度に釣り合うのは、地球上で最も汚れた場所でなければならなかったかのようだ。

地上で最も汚れた場所に、地上で最も美しい庭を作り上げたジャーマン。映画『ウィトゲンシュタイン』(Wittgenstein, 1993)と『ブルー』(Blue, 1993)を遺作に、地上を去ったジャーマン。「汚れた」かに見える性と人類の宿命のような病の「向こう」にジャーマンが見ていたのは最も「深い色」ブルーだった。それはジョナス・メカスが今日のフィルムで叫ぶように朗唱した「愛の色」、空の青だった。

derek jarman's garden(2007年09月09日)

「森」が失われたデレク・ジャーマンの庭を見つめるレヴィ = ストロース、黙示論的なデレク・ジャーマンの庭を散歩するレヴィ = ストロースを想像する。