美しいダムと街海

二つの驚きがつながって、もう一度驚いた。

ダムが美しいはずがない、と思い込んでいた私の目に、たしかに美しいダムのイメージが踊っていた。

ダムに沈んだ二風谷を思い出しながら、町を水底に沈めたダム、川だけでなく、土地も海も「殺す」ダムが「美しい」はずがない、という私の先入観が揺らいだ。生まれたときにそれがそこに存在したら、それはもう所与だ。それに、文字通りの「自然」なんてこの地球上に存在しないのだとすれば、どんな罪深い人工物だってある意味で自然なのだ。だとすれば、そこでどれだけ幸せに生きることができるかが問題になる。でも、やっぱりそれを「水の文化遺産」と呼ぶことには大きな抵抗をおぼえる。「水の文化破壊遺産」なのではないかと。でも、でも、美しい。

ダムが町を水の底に沈めるように、巨大な都市は目に見えない汚れた水、海の底に沈んでいるようなものだ。そんなメッセージが、どこか現代の神話的なニュアンスを伴って、強烈に迫って来た。一瞬、言葉を失った。しかも、夕焼け。「赤の予感」だ。

「続き」、「曼荼羅」的空気を切り裂く現実はこれだったのね。