記憶の彼方へ004:父母の遺影

現在の私よりもずっと若い父母。昭和50年、高校3年の夏に、日本海に面した岩内町雷電温泉で、私が撮った父母。

この時母はすでに癌に冒されていた。それから数ヶ月後に入院し、その年の暮れに逝った。母の最後の写真である。父とのツーショットの写真は珍しい。結婚前後の写真はたくさん残っているが、おそらくそれ以来初めてのそして最後の写真である。二人が揃って笑顔の写真というのも珍しい。特に父がこんな笑顔を見せた瞬間を他に知らない。このときまだ誰も母の癌のことは知らなかった。高校3年の私よ、よくぞこんな素敵な二人の写真を撮ったもんだ。この時二人の間にはどんな気持ちが通い合っていたのだろうか。私にとってはこの写真が父母の最良の遺影である。