空き家の屋根

散歩の後半、一軒の空き家の屋根がスクリーンのように目に飛び込んでくる。毎朝違う「絵」を見せられる。今朝は一昨日積もった雪が部分的に滑り落ちて崩れた造形だったが、それもまたよい。「美しい」とは言えないかもしれないが、いい感じだった。こうして、同じ雪でも毎日違うその表情を見るのが好きだ。言ってみれば、太陽の光と熱、雪(水)と風と重力が作り出す変化しつづける形、「影」。自然は贅沢なインスタレーション*1に満ちている、と言えるだろうか。街もそうかもしれない。街に深く分け入って写真を撮りたくなるのも、そのせいではないだろうか。そこで働く複雑な力や流れを一瞬止めたり、加速したり、回転させたり、……、つまり局所的にうまく介入できたとき、人間にも何か「美しい」ものが作れるんだろうな。

*1:「原義は,取り付け・据え付けの意。現代芸術において,従来の彫刻や絵画というジャンルに組み込むことができない作品とその環境を,総体として観客に呈示する芸術的空間のこと。」(『大辞林』)