宗谷岬に向かう湾岸道路(国道238号線)から見る遠浅の海はとても静かだった。海面は岬や燈台を鏡のように映していた。宗谷岬に近づくと、まるで氷山のように見える真っ白な岩礁が視界に入った。後で宗谷岬展望台1階の土産品センターの売り子に尋ねたら、それこそが地図には載っていないが、弁財天が祀られているという、日本が実効支配している最北端の島、弁天島だった。白く見えるのは、案の定、カモメの糞に覆われているからだった。オホーツク海側の沿岸には霧が立ち籠めはじめた。コンブ漁をしていると思しき人影が霧を背景に非常に幻想的に見えた。海岸から100mくらい離れたところを歩く人もいた。
ソウヤとは、アイヌ語である。宗谷岬の海上にある岩礁(いまは弁天島)をさしているという。Sō-ya。
(司馬遼太郎『オホーツク街道』(asin:4022641363)233頁)
só-ya そヤ 岩礁が多い海岸;岩岸
(知里真志保『地名アイヌ語小辞典』(asin:4832888021)126頁)