稚内綺譚









5日、夕方5時くらいに稚内駅近くのホテルにチェックインして、すぐに町の散策に出た。札幌にいるときより二枚多く重ね着したが、寒かった。ホテルのフロント係のお姉さんに教えてもらった古本屋(?)「おおひろ」はあいにく休みだった。閑散としたアーケード街の看板や役所の敷地入口の立て札ではロシア語の文字が目についた。鉄道最北端の稚内駅の線路の終端は拍子抜けするほどあっけなかった。終わりというのはすべてこんな風なのかもしれないと思った。6時くらいに夕食のために入ったこぢんまりとした居酒屋では、なぜか若きチェット・ベイカーのバラッドが流れていた。ああ、懐かしい。気っ風のいい年配の女将と意気投合した。CDは彼女がセレクトしたものだった。彼女のお薦めで、ピンクのホタテ刺身、かすべ(エイ)の竜田揚げ、タラバガニの「褌」など珍しいものを食した。絶品だった。最後には特製おにぎりを作ってくれた。ほっとする味だった。彼女からも樺太が見たいなら秋にお出でと言われた。今年のサハリンとのビザなし交流は5月15日から始まるという。最近は漁船に乗って買物にやってくるロシア人の家族が多く、ロシア娘は本当に美しい、世界一美しい、となぜかしきりに褒めたたえていた。そのお店では自慢の手打ち十割そばも出す。ただし、夜9時以降限定。今回は食いそびれた。