牧野さん


シオン(紫苑, Tatarian aster, Aster tataricus



未詳


風太郎時代からよく立ち話をする牧野さんちの通りに面した庭は大きくて初春から晩秋まで次々と各種の花が咲き誇る。今は大輪のアメリカフヨウやムクゲが花盛りで、少し前までは巨大な黄色のキダチチョウセンアサガオが一際目をひいていた。だいぶ前によく実ったフサスグリの果実を少しいただいた。キダチチョウセンアサガオの写真を撮り損ねたという。今度私が撮った写真をお持ちすることを約束した。赤い実がたくさんなっている木の名前を二人とも思い出せなかった。たしか、黄色い小さな花だったんじゃないかしら。今朝はちょっと奥まった所でシオンが風に揺れているのが目に入った。撮らせてもらった。紫を全部ピンクに植え替えたという。「ピンクがお好きなんですね」と言うと、一瞬顔を伏せ、少女のように照れていたが、牧野さんはとても繊細だがナイーブな人ではなく、人の集まりには必ず何か話のタネを用意していき、皆を喜ばせたり、逆にからかわれたりするのが大好きな人で、不思議に肝っ玉の座ったところのある愉快な人である。話していてとても楽しい。別れ際には、風太郎がいなくなって寂しいねえ、写真は風太郎の替わりなんだねえ、とドキッとするようなことを呟くように言った。