ケータイ写真

我が家には今カメラがあのG7一台しかない。昨夜のこと、カミさんが明日から仕事のような遊びのような中間モードでおばあさんたちの一団を引率して旅に出るにあたって、カメラを貸せというので、えっ? それは困る、散歩で写真が撮れなくなるなあ、と私が答えるであろうことを先刻承知のカミさんは、それには、たまには丸腰で散歩するのもいいでしょ、と返すに決まっているので、0.7秒くらい思案して、「いいよ。たまには丸腰で散歩するのもいいな」と答えて、そう答えながらも、オレはきっとケータイ写真を撮ることになるだろう、と人事のように思っていた。朝早く、私はまだ最後の夢を見ている頃に、カミさんは家を出た。目覚めたとき、カミさんがカメラを持ち忘れていてくれることを微かに期待している自分がいた。そして、机の上にG7がないことを確かめて、いよいよ覚悟を決めた。ケータイしかない、と。われながら、呆れた。


そういうわけで、今朝はケータイを片手に散歩したが、G7のようには体の一部になっていないので、あっ、おっ、と思ったものがあっても、咄嗟には反応できずに、結局、三浦さんちのハナとのツーショット一枚しか撮れなかった。散歩の途中で、ちょっと未来の自分にそのデータを送信した。


家に戻って、朝飯を食いながら、新聞を広げると、「軍艦島」という言葉が目に飛び込んできた。乗っかっているのは散歩で拾ったニシキギ(錦木, Winged spindle or Burning bush, Euonymus alatus)の実。『軍艦島』。読んでみたいと思った。