経済技術開発区にあるホテル6階の部屋からの眺め。近くには飲食店もスーパーもコンビニもない。
部屋で青島ビールを飲むしかない
B学院で仕事を終えると、K院長じきじきにキャンパスを案内してくれた。最後に案内された博物館では、学芸員が同行して詳しい解説を聞かせてくれた。一通り見学を終えると、控え室で感想を書き残してくれるよう求められた。巨大なスケッチブックには過去にここを訪れた人物の感想と署名が各国語で記されていた。K院長は博物館の素晴らしさを褒める言葉を期待していただけで、他意はなかったかもしれないが、私は否応なく個人であることを越えて日本から来た日本人としてある意味で試されていると感じた。それは一瞬とんでもない重荷に感じられたが、次の瞬間には彼の暗黙の期待を良い意味で大きく裏切るつもりになった。サインペンにするか毛筆にするか聞かれた。懐かしい王羲之の書を見た直後でもあり、迷わず毛筆を選び、しばし考え込んだ。過去から現在に至る日本と中国との関係を踏まえて、未来を見据えたメッセージを分かり易く簡潔に表現したいと思った。「歴史」「学び」「平和」「未来」「構築」という五つの言葉を使ってそれを表現した。それを見たK院長はお世辞だろうが、「素晴らしい」と驚嘆の声を上げ、拍手し、握手を求めてきた。それに応じながら、しかし、私の心はやや荒み沈んでいた。
高級リゾート地として開発が進められている金沙灘観光地区。高級マンションは韓国人が買い占めていると聞いた。
金沙灘海岸。ここで冷たい風に吹かれながら、無闇な破壊につながらない「開発」はありうるかと考えていた。気分が重たくなった。青島(チンタオ)と言えば、、。行ってみたい場所はたくさんあったが、今回はその願いは叶わなかった。