鈴木清の幻のCD-ROM『漂う水、女――ナジャ』


 鈴木清(1943–2000)が生前刊行した8冊の写真集の表紙。『愚者の船』以外はすべて自費出版


鈴木清の生前のインタビュー記事の最後に「幻のCD-ROM」の話が出てくる。


質問:写真集、写真展、雑誌の連載などがありますが、最近のデジタルという媒体についてはどうですか。
鈴木:いやおれ、CD-ROMあるんだよ。幻の。150点写真はいっているんだ。
質問:えっ!あるんですか。それは知らなかった。
鈴木:出来てんの。出来たんだけど。事情があって出版がダメになってしまった。世に出すのを。ぼくの手元にあるんだけど、それを上手くプレスすれば商品化されるんだけれど。まさに幻のCD-ROMですよ。自分で編集して、ムービーも、音も入っているんです。見て下さいよ。タイトルは“漂う水、女――ナジャ”ですよ。ぼくも結構サーカスの女など旅先で拾った女性の写真が多いんですよ。インターネットとかパソコンは自分独りで見るものじゃないですか。そういう雰囲気でジワジワと編集したものです。

  「interview 第8回 鈴木清」(Internet Photo Magazine Japan)より


鈴木清が十数年前にどんな写真とどんなムービーとどんな音をどう編集したか、どう遊んだか、ちょっと興味が湧く。出版がダメになった「事情」が気になるところだが、それはいつか解消され、何らかの形で出版される可能性はあるのだろうか。


鈴木清はロバート・フランクRobert Frank, born 1924)と親交を結んでいたことでも知られるが、上のインタビューの中で鈴木清はロバート・フランクの「社会的風景」を捉える目に影響を受けたという内容のことを語っている。大変興味深い。「社会的風景」。それは社会が焼き付けられたような心の風景と言ってもいいだろう。


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