水清き沼に 黄金の
蓮の花 一輪
泥の中より生まれし
その清らかな姿
人知れず咲けども
際立つ美しさ
その美しさに引かれ
群がる虫ども
どの虫がこの花を
射止めるやら山崎剛太郎訳
マルグリット・デュラス監督の映画『インディア・ソング』(India Song, 1975)冒頭で、女が未知の言語で歌う「蓮の花」の歌声が好きだ。上に引用した山崎剛太郎による日本語字幕から歌われている光景を想像する。残念ながら、私には日本語から立ち上がるイメージと原語から立ち上がるイメージとの差異を測ることはできはない。原語固有の連想の広がりは想像を越えている。歌に続けて聞こえてくる同じ女の同じ未知の言語の語りには、「インド人ではない。サバナケットの生まれ」という字幕が流れる。語りは唐突にフランス語に切り替わり、「サバナケット、ラオス」と明瞭に聞き取れる。未知の言語はラーオ語(ラオス語)だろうか。とにかく、「蓮の花」の歌声は美しい。
参照
- 広州の街路樹と路地(2010年06月22日 )
- 孤独の歌は聞こえない:soul and soul(2010年12月07日)
- 鈴木清の幻のCD-ROM『漂う水、女――ナジャ』(2010年12月13日)
- 写真に関する四つの引用(2010年12月17日)
- 不安な文字組(2010年12月26日)
- DURASIA(=DURAS+ASIA)(2011年02月16日 )
- 1955年のマルグリット・デュラスの肖像(2011年03月07日)
- マルグリット・デュラスの塩漬けキャベツ(2011年11月10日)
- ガンジスの女の青い月(2011年11月13日)
- India Song(2011年12月16日)
- 時間の廃墟、瞬間の経験(2012年01月14日)
- India Songの消息(2012年01月19日)