ジョナス・メカスの日記から:詩の本質


WTC Haikus, Jonas Mekas' Diary, September 10, 2011


ジョナス・メカスの9月10日の日記に、‘WTC Haikus’と題した作品が上げられた。9.11を翌日に控えて、メカスの胸のうちにどんな思いがどんなイメージと共に去来したのか。以下のような内容の説明が付されていた。

自分が撮った過去のフィルムを見ていて驚いたのは、ソーホーで暮らしている頃にかなり頻繁に世界貿易センターを見ていたことだ。まるで富士山を見る北斎だったような気がした。世界貿易センターはソーホー時代、つまり1975年から1995年にかけて、私と家族の暮らしの切り離せない一部だった。この作品はその頃の暮らしに捧げる愛の詩である。制作方法はいたって単純で、オリジナルのフィルムから世界貿易センターの映像を抜き取っただけである。もちろん、そこには周囲の光景も含まれている。結果的に、間接的にではあるにせよ、私は俳句として知られる詩の本質に近づいた気がした。


ジョナス・メカスの言う「俳句として知られる詩の本質」とはいわゆる〈無常観〉のことだろう。無常なる世の中に生きながら、世を無常と観ずる心の距離に「愛」の感情が非常に儚い虹の橋のように架けられる。そんな美しい作品である。