ブルース・チャトウィン『パタゴニア』

食わず嫌いで読んだことのなかったブルース・チャトウィン(Bruce Chatwin, 1940-1989)。先日「ソングライン(Songlines)」について書いてから、手に入りそうな彼の本をあちらこちらに注文した。昨日、めるくまーる社から出た芹沢真理子訳の『パタゴニア』(IN PATAGONIA, 1977)が届いた。

パタゴニア

パタゴニア

ぱらぱらと捲っていたら、14頁の次の一文に目がとまって、私はチャトウィンが一気に好きになってしまった。

 私はリンネ式動植物分類法のラテン語に頭をくらくらさせながら、ラプラタの墓場をあとにして、パタゴニアの玄関口、ブエノスアイレスへ、南へ向かう夜行バスの発着所へと大急ぎで戻った。

これは、「私」が「ラプラタの墓場」、すなわち南米一の自然史博物館を見学し、恐竜の絶滅と哺乳類の進化をめぐる五千万年前にまでさかのぼる科学的想像力の世界に遊んだ直後の記述である。

チャトウィンでさえ自然分類法に頭をくらくらさせたから、ではなく、頭をくらくらさせるほど、ちゃんとそれに付き合って、しかもそのことを正直に書いているから、好きになった。生きていたら友達になれそうだと勝手に思った。