"a flower duet" by Elle Burchill:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、7月、196日目。


Day 196: Jonas Mekas
Sunday July 15th, 2007
4 min. 30 sec.

a video postcard
from
Elle Burchill ---

エル・バーチル
からの
ビデオ・ポストカード

冒頭に、次のキャプションが入る。

Here is a
video postcard
I received from
Elle Burchill

エル・バーチルから
受け取った
ビデオ葉書

最初のシーン:薄暗い室内で、鈴をつけた黒猫が、薔薇のドライフラワーにじゃれついている。音楽は曲名は分からないが、セゴビアのようなギターのソロがかかっている。

二番目のシーン:同じ薄暗い室内で、黒猫の姿はよく見えない。突然、マニキュアをした右足の先が写る。そのすぐそばに先ほどの薔薇のドライフラワーが置かれている。音楽は初めて聴く種類の女性の歌声。非常にゆったりとしたたゆたうようなリズムの曲。右足の親指と人差し指の間に薔薇を挟もうとするが、一度失敗する。二度目に成功し、その足を持ち上げ、一人がけの黒い革のソファの上でしばらく左右に動かしてから、その上に落とす。その瞬間音楽は止み、画面もフェードアウトする。エロティックだ。タナトス死の欲動)に駆られて、彼岸に「イッテ」しまう悦楽ではなく、此岸に留まり快楽が持続するエロティックな状態(千の高原)。(前エントリーでふれた村上春樹が「やみくろ」と命名したものはタナトスのことだったかもしれない。)

暗い画面のまま、三曲目が流れ出す。これはメカスが選曲してつけたようだ。曲名は分からないが、プッチーニかな、違うかな、とにかくオペラのアリア。女性ソプラノ。それを聴きながら、最後にエル・バーチルからのメッセージが写る。

Inspired by some
recent pods,
I revisited old footage.
This is what I found;
a flower duet
for you, Jonas
  elle

最近のあなたのフィルム
を見て、
古いフッテージを見直す気になったの。
これはなかなかでしょう:
花の二重奏を
あなたに、ジョナス。
  エル


ウェブ上にはエル・バーチルの数作品に関する断片的な情報しかなく、彼女に関しては、ブルックリンに住む実験的ビデオ・アーティストであり作家でもあるということしか調べがつかなかった。他方、彼女はこの365日映画を配信するJonas Mekas.comにおいて、ベン・ノースオーバー、セバスチャン・メカスと並んで「編集および共同映像制作」のスタッフの一員に名を連ねている。今でもそうだとすれば、わざわざこのようなビデオ・ポストカードをメカスに送るというのは妙なことだが、そのあたりのことはよく分からない。