一見ありふれたビジネスホテルの窓からの眺めに、レースのカーテンの格子模様と襞が、まるで目的=対象物と私との間を永遠に隔て続ける時間と距離の形象のように見えてきた。「博多駅前のビジネスホテルからの眺め」だという。
博多駅前のビジネスホテルからの眺め
カーテンと窓を重ねた景色を、
これまでに何回撮影しただろうか、
決定的な一枚はすでに三十年前に撮れているのに、
未練がましくまだ撮り続けているのです。
ええ、知っています、自分の才能の限界のいかに小さいかという
厳しい現実を。でも、やってしまうのです。
そして、同じ島尾伸三の『季節風』の中の写真の一枚に驚いていた。「決定的な一枚」かどうかは分からない。
「バンコク/雲が輝きに引き裂かれ始めたようで、Bangkok / and it seems the clouds are beginning to be torn apart by radiance–」(242頁)。レースのカーテンがこんな風に薄く透き通り、柔らかく襞を作ることがあるのか。