メモ
With Taylor Mead, October, 2009, Jonas Mekas' Diary, May 16, 2013 5月16日、ジョナス・メカスのダイアリーにテイラー・ミード(Taylor Mead, December 31, 1924–May 8, 2013)を追悼するビデオがアップされた。それを見るまでミードが亡くなったことを知…
掘り起こせなかった甘い歌を いくつ抱え込んだところで生涯は閉じられるか 山本博道『恋唄』(ワニ・プロダクション、1985年)より いま、こうしてぼくの少年期に出会うとき たまらないさびしさがあふれてくる 山本博道『短かった少年の日の夏−−遠い風景』(…
死をゆく旅―詩集 「羈旅」は古くは「羇旅」と書き、「きりょ」と読む。旅といえば、馬と道連れの旅であった時代を彷彿とさせる言葉だが、『万葉集』以来、「羇旅発思」は和歌・俳句の部立(ぶだて)、つまり分類の一つにもなっている。『万葉集』では巻11と…
二里川(石狩川水系)、釣橋付近、札幌市厚別区大谷地東2丁目。左手の先方で厚別川に合流する。流路延長5.6kmの短い川である。 「二里川(にりがわ)」という変わった川名は山田秀三の『北海道の地名』には載っていない。アイヌ語系ではなく、明治期の「二…
Instant Light: Tarkovsky Polaroids 晩年(1979年から1984年まで)のタルコフスキー(Андрей Арсеньевич Тарковский, 1932–1986)はロシアとイタリアで、好きな場所、家族(飼い犬を含む)、友人をポラロイドカメラで撮っていた。この『瞬間の光』には、フ…
Encyclopedia of Flowers―植物図鑑 本書は東信が2009年から約2年間にわたって制作した約1万本の花卉を使った「前衛的」と評されることの多い、生け花作品の写真集(椎木俊介撮影)であるのみならず、その表題通り、1600種の植物図鑑でもある。巻末には70頁…
Clos Buzao, Pinot Noir, 2011(Dealv Mare, România) ルーマニア産の赤ワインを初めて飲んだ。女房がデパ地下の安売りで買ってきた「クロ・ビュザオ」のピノ・ノワール。濃厚な果実味と渋味のバランスがよく、予想外に美味かったので、生産者と生産地につい…
Jonas Mekas ケルンのルートヴィヒ美術館(Museum Ludwig)とロンドンのサーペンタイン・ギャラリー(Serpentine Gallery)が共同制作し、2008年にロンドンのケーニッヒブックス(Koenig Books)が出版したジョナス・メカス・カタログ。このカタログは単なる…
朝日新聞の記事「縄文のビーナス」の切り抜き、人形記―日本人の遠い夢 21日の朝日新聞の朝刊にいわゆる「縄文のビーナス」と呼ばれる土偶の一種が国宝に指定されることになったという記事が載った。これまでにも長野で出土した同種の土偶が国宝に指定された…
Meredith Monk - Lost Wind from Volcano Songs (1997) もし世界の声が聴こえたら―言葉と身体の想像力 世界にも声がある−−−メレディス・モンクの不思議な野生の呼び声を聴くたびに私はそんな感じを抱いてきた。もし世界を聴きとる特異な耳が私にあったなら音…
支笏湖 森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫) / 森の生活〈下〉ウォールデン (岩波文庫) 支笏湖畔で、150年前にウォールデン湖畔の小屋で綴られたソローの『ウォールデン、森の生活』を30年ぶりに読み直し始める。30年前に理解したつもりになっていた老成…
人生は、一瞬一瞬が未知に抜ける途上にあり、そのような道を歩くことだと思う。 asin:4560042969 今やっていることはみんなとても新しいことだ、新しい人生の一部だ。 ヴェルナー・ヘルツォーク『氷上旅日記』11頁 どんな状況にあろうが、そう思えるかどうか…
感情を制御した上での抽象的な概念の操作や複雑な内面の描写よりも、一見単純な外界の描写のほうがよほど難しいと常々思ってきた。五感がどれだけ研ぎすまされているか、自我がどれだけ消尽されているかが如実にあらわれるからだ。その点で、ニコラ・ブーヴ…
asin:462207298X 高橋啓訳『ブーヴィエの世界』(みすず書房、2007年)の著者略歴にはニコラ・ブーヴィエ(Nicolas Bouvier, 1929–1998)は「スイスの作家・旅行家・図像調査士」とある。図像調査士? 本書に「解説」として収められた、翻訳の底本クワルト版…
人は一生に何度「生まれる」のだろうか? asin:4894346737 森崎和江さんは子育てが終わった頃に「ふたたび旅へ」(1976年)という非常に印象的な文章を書いている。若い頃には人は二度生まれるものと感じていた、という。すなわち、人は一度は母の胎内から生…
asin:4894346648 asin:4894346788 水と血とあなたはどちらにより深くぶれますか? 空と男と、あなたはどちらにより強くふるえますか? ヤマの、あなた。森崎和江「浮游霊と祖霊」(1971)、『精神史の旅 2地熱』所収、314頁 森崎和江さんに導かれて、「くら…
asin:4062752506 ……あなたはどこに立脚してものを主張するのか、ぼくはどこに足をつけて表現するのか、それが大事だと思います。立脚する場の実相は、いかに貧寒としていても、隠すべきではない。(中略)ぼくはいま、ぼく以外のだれをも代表せずにお話しし…
山口勲写真集『ボタ山のあるぼくの町』(海鳥社、2006年) asin:4874155731 118頁〜119頁 山口勲写真集『ボタ山のあるぼくの町』(海鳥社、2006年)は、ヤマで生まれ、ヤマで育ち、ヤマで働き、ヤマを撮り続けたヤマの写真家「イサオちゃん」こと山口勲さん…
asin:4043417012 記憶というものを、私たちはなめてかかっていると思う。五十年前とは、かなり多くの人びとにとって、昨日なのだ。(辺見庸「ある日あの記憶を殺しに」、『もの食う人びと』角川文庫、1994年、335頁) 人生が特異な時間の経過であり、掛け替…
asin:462060609X 松山巌は「未踏の景観学のために」(『宮本常一 写真・日記集成 附録』2005年、に収録)のなかで、宮本常一が遺した十万枚を超える写真群のなかには「景観学」ともいうべき宮本独自の壮大な学問の体系化への意図とその可能性を読みとること…
ツタ(蔦, Japanese creeper or Japanese Ivy, Parthenocissus tricuspidata) ガンジス河の河原で人間の死体が粗大ゴミのように無造作に次々と燃やされる光景を見続けたり、中洲に流れ着いた人間の死体に食らいついていた犬たちに襲われて命を落としそうに…
『風の旅人』 16号 - FIND the ROOT 「世界」と「人間」のあいだ - HOLY PLANET 他人事のように実体化されがちな歴史にサヨナラを告げて、親密な語りに積極的に巻き込まれながら、ぼくらは日々刻々と歴史する(doing history)存在なのだ、と主張した今は亡…
『風の旅人』 37号 - FIND the ROOT 永遠の現在 - 時と悠 新約聖書のヨハネによる福音書で描かれた世界のはじまりの光景には前史がある。旧約聖書の創世記である。偶然のような必然だったが、『風の旅人』(2009年6月、37号)に掲載された姜信子さんのエッセ…
『風の旅人』 38号 - FIND the ROOT 彼岸と此岸 - 時の肖像 姜信子「一引き引いたは、千僧供養」(83頁〜86頁)を読む。これは説教節小栗判官の物語をめぐって、この世の理不尽を超える何か、独りであって独りではないはずの人間と物語の希望、について語っ…
ブルース・チャトウィンは、”パリ”ノートと称したモレスキンの手帳をパスポートよりも大事に扱った。チャトウィンは旅先でモレスキン手帳に、おもしろく感じたことや、心奪われたさまざまな観念や、引用や、出会いなどを記録し続けた。彼の代表作の『ソング…
Presa di coscienza sulla natura (Awareness of Nature) 2000 Scanno, 1959 本書(The Black is Waiting for the White)にはマリオ・ジャコメッリの息子シモーヌ・ジャコメッリによる「マリオ・ジャコメッリ:1925年生まれの男子と1968年生まれの息子の思…
asin:4480084215 久しぶりにジル・ドゥルーズの『ニーチェ』を読み直していて、次の一文にひっかかった。 肯定とは意志の最高の<力>である。(60頁) 裏返して、否定とは意志の最低の<力>である、と言えよう。自然と死を否定するハイウェイから肯定する…
不思議な縁でロンドンから逃れて<北の大地>、スコットランドのピトロクリに導かれ霊感を得た漱石が著した『草枕』を愛読したグレン・グールドの<北>への志向性を引き受けてグリーンランドに飛んだのは坂本龍一だった(http://d.hatena.ne.jp/elmikamino/…
asin:4120040526 「ぼくは文学者にならなかったなら、園芸家になっていた気がします」という言葉を遺したチェーホフは、30歳の時にシベリアからサハリンを旅して(その動機には不透明なものを感じる)、医者兼作家らしい、驚くほど綿密な記録を残した。本書…
中上健次の部落認識と「路地」観について調べていて、猿回し師の村崎修二が宮本常一から聞かされたという中上健次の逸話を思い出した。 村崎にとって宮本が話した中上健次のことも忘れがたいものだった。芥川賞をとるだいぶ以前、中上が部落問題について宮本…