青い傷


一見ありふれた浦の風景に異様な青い傷のようなものが浮き上がる。その写真からは、そこだけ別物のようにペンキの青が生々しくまるでこちらの世界に飛び出しているような強い印象を受けた。そこだけペンキ塗り立てのように不自然だ。何だろう? 写真には次のような言葉が対置されている。

奄美大島加計呂麻島・吞の浦


うち捨てられたままのサバニ(板つけ船)は、
湾に沿って在る細い砂浜の演出を
受け持たされているのでしょうか。私の思いではすでに
博物館行きの代物なのでしょうか。
ええ、そうなのかもしれません。四半世紀も
ほったらかしにしてあった思いなんですから。

 島尾伸三『東京〜奄美 損なわれた時間を求めて』107頁

「四半世紀も/ほったらかしにしてあった思い」なのか。その飛び出してくる「青」は。それは彼の「演出」なのか。ふと、反転すれば血の赤になる、と思う。