「雑草という名前の草は無い」。これは昭和天皇のお言葉らしいが、いわゆる雑草の身になって「雑草とは言わせない」などと一人前のことを口走り、書きながら、実際には相変わらず身近な雑草たちの多くをよく知らない。でも、注意して見るようになってからは、あの誰にも見向きもされない目立たない植物たちに愛着が湧いてきたのは確かだ。風にそよぐイネ科やカヤツリグサ科の雑草たちは美しい。せめて名前だけでもパッと出てくるようになりない。そう思って、体調を崩して寝込む前に、いわゆる雑草の同定に関して、口先ばかりでなく、本腰を入れるつもりで注文してあった本が届いた。
形とくらしの雑草図鑑―見分ける、280種 (野外観察ハンドブック)
- 作者: 岩瀬徹
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- 作者: 勝山輝男
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雑草(Weed)は、人間に無視されたり軽視されたり、邪魔者扱いされたりする反面、実は人間に寄り添って生きる健気な存在でもある。
例えば、Wikipediaの項目「雑草」の記述の中には、「(人間の生活範囲に)人間の意図にかかわらず自然に繁殖する植物」、「特定の分類群を示すものではないが、人間の活動によって強く攪乱を受けた空間を生息場所とする」、「重視されないがたくましい存在として、比喩に用いられる」、「特に何の取り柄もないものと見なされがちであるが、実はそうではない」、「雑草の多くは、人家周辺でのみ生活しているものである。このような植物は自然の保存された山野では見られず、人がそこに例えば道をつけると、そこに出現する」など、思わず引き込まれてしまうほど魅力的な箇所がある。
しかし、同定は難しい。というのは、雑草の中には、「風媒花」(ふうばいか、Anemophily or wind pollination)として進化したために、花が地味で、目立たないものが少なくないからである。実際に、種類が多くて同定が難しく、植物観察では相手にされることが少なく、敬遠されることが多いという。
そんななかでも、カヤツリグサ科のスゲ属(菅, Carex)はスゲーらしい。
スゲ属(菅、Carex)は、カヤツリグサ科の一つの属である。身近なものも多いが、非常に種類が多く、同定が困難なことでも有名である。
スゲ属は、植物ではもっとも多くの種を含む属としても知られており、世界で2000種とも言われる。ほとんど全世界に分布するが、温帯域が中心である。日本では現在で200を越える種や変種が記録されており、毎年のように新しいものが報告される。これは、この仲間が、種分化をどんどんしている途中であるためと考えられる。他方で、変異の幅が広くて、種の範囲が分かりにくく、まだその実体が十分につかめていないという面もある。今後もさらに見直しが進むものと思われる。日本スゲの会にはアマチュアも含めて全国に会員がおり、活発に活動している。
属を細分する案も様々に提案されている。いくつかの節に分けて扱うのが通例であるが、その扱いは必ずしも確定していない。現在は分子遺伝学的情報などによる見直しも行われている最中である。
特にスゲ属はイネ科植物や他のカヤツリグサ科植物の同定に慣れた専門家ですら敬遠するほど、同定困難なものが多い。
俄然、やる気が出てきた。ちなみに、私の頭の中にはまだ「スゲ」という大雑把な分類=名しか存在しない。
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