広州の街路樹と路地



ブーゲンビリア (筏葛, Bougainvilleae, Bougainvillea glabra



サルスベリ百日紅, Crepe myrtle, Lagerstroemia indica



インドソケイ(印度素馨, Plumeria, Pagoda Tree and Temple Tree, Plumeria rubra


大連から空路二千五百キロほど南下して広州に行く。札幌から沖縄に飛ぶような距離感である。大連は仙台と同じくらいの緯度に位置し、広州は日本最南端の有人島である沖縄八重山諸島最南の波照間島よりさらに南に百キロ余りの緯度に位置する。いわゆる亜熱帯の気候である。たしかに蒸し暑かったが、さほど気にならなかった。それよりも広州で暮らす人々の騒然として渦巻く熱気と圧倒的に豊かな緑が非常に印象的だった。至る所で植物たちが人間たちの思惑を超え制御を逸脱してその存在感を誇示しているように感じた。特に、行き交う人々で賑わう下九路を被いつくさんばかりの街路樹が痛快だった。改装工事中の建物の足場が竹で組まれていることに気づいて密かに感動していた。竹の文化、、。綺麗なツンとすましたサモエド犬を見かけた。愛しのハナを思い出す。目を大きく見開いたままの赤ん坊に見つめられた。渋滞する車を尻目に自転車で疾駆する人たちの姿が爽快だった。路地の入口に佇むと、その奥に垣間見える生活の濃密な空気に微かに触れた気がした。ある大型書店ではマルグリット・デュラスの本が目にとまった。彼女の小説『愛人』だったろうか、人格が蒸し暑い大気の中に融けて消えてしまうような退廃の描写を思い出す。スターバックスの前で、「さあ、そろそろ行くか」といった勢いで荷物に手をかけた路上生活者を見かけた。