知念ウシ(ちにんうしぃ)の日本自立論

沖縄核密約もあることだし、池澤夏樹に噛み付いたことでも知られる知念ウシ(ちにんうしぃ)さんの「日本こそ沖縄から自立すべし」という立論は痛快に正しい。


朝日新聞(朝刊)2010年8月24日


知念ウシさんはかつて沖縄を訪れる日本人観光客にも噛み付いた。よく分かる。

沖縄には日本(本土)から年間五百万を超える人が来るそうだ。
 バニラシェイク色の手足、日焼けではれた皮膚、半ズボンからむき出しの足に揺れる黒いすね毛。赤い唇。細い目。なまりのある大きなうわずった声。目深にかぶる帽子。日傘。サングラス。雑誌にのってる服。アイロンのかかったシャツにズボン。ノーネクタイ。肩の落ちたアロハシャツ。握りしめたガイドブック。カメラ。おどおどして同時に傲岸(ごうがん)な目つき。組んだ足。発音の違う沖縄語。台風が来ると怒る。曇ると怒る。交通マナーを守らない「わ」ナンバー。勝手に子どもの写真を撮る。葬式の写真も撮る。
 「沖縄が好き。癒やされる」。どこにでも入れる魔法の無料チケットみたいに言う。
 いつも思うんだけれど、この人たちは沖縄から帰ったあと何をしているんだろう。
 「ねえ、どうしているんですか? 沖縄から帰った五百万人が国会議事堂に直行して座り込めば、沖縄の基地は一挙になくなりますよ。沖縄が好きなんでしょう。基地をなくしてくださいよ。そしたら、もっといい沖縄になりますから」。
 何回か聞いてみたことがあるけれど、みんなシーンとなっちゃうんだよね。「沖縄が好きなら基地を一つずつ、持って帰ってもらえませんか」と言うときもそう。ま、まさか、基地のある沖縄が好き? えっ、まじ?!
 もし、基地があるのがお好きなら、ますます、どうぞ、テイクアウトでお願いします。(むぬかちゃー)


「沖縄に来る人 知念ウシ:こころの風景」(asahi.com, 2004年05月18日)


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