社会

「花を奉る 石牟礼道子の世界」を見て

一昨日の夜、NHKの特集番組「花を奉る 石牟礼道子の世界」を見た。昭和2(1927)年3月11日生まれの石牟礼道子さんは、昨年の東日本大震災の当日84歳を迎え、今年で85歳になる。原発問題にも通底する水俣病問題の解明に全身全霊を捧げ続けてこられた石牟礼道…

日本の「狂気の歴史」と今

治療の場所と精神医療史作者: 橋本 明出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2010/09/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (4件) を見る 本書は、中央政府や帝国大学の専門家が推進した西欧近代の視点からの精神医療のいわば大文…

合衆国版「狂気の歴史」:写真集『アサイラム』

Asylum: Inside the Closed World of State Mental Hospitals (The MIT Press)作者: Christopher Payne,Oliver Sacks出版社/メーカー: The MIT Press発売日: 2009/09/04メディア: ハードカバー クリック: 3回この商品を含むブログを見る 「アジール」関連で…

報道と現実

朝日新聞(夕刊)2010年8月27日 「鼻や蹄から泡や液や血が噴出し、悶え苦しむ。豚舎のあちこちには抜け落ちた血だらけの蹄が散乱していました。それでも子豚は足を引きずりながら乳を求める。母豚の乳房も腫れあがっていたが痛みに耐えて子に乳を与えた。だ…

知念ウシ(ちにんうしぃ)の日本自立論

沖縄核密約もあることだし、池澤夏樹に噛み付いたことでも知られる知念ウシ(ちにんうしぃ)さんの「日本こそ沖縄から自立すべし」という立論は痛快に正しい。 朝日新聞(朝刊)2010年8月24日 知念ウシさんはかつて沖縄を訪れる日本人観光客にも噛み付いた。…

権力の囁き:公開という名の隠蔽

朝日新聞(夕刊)2010年8月27日 合法化された国家による組織的かつシステマティックな人殺しである死刑の刑場が肝心の〈現場〉を巧妙に回避した形で報道機関に公開された。薄気味悪さだけが残る記事だった。名を伏せられた法務省の担当幹部の指示によって、…

日記は何を証言するのか

朝日新聞(朝刊)2010年8月24日 この記事は警視庁蒲田署への取材にもとづいて書かれたとある。その取材によって、死んだ母親の老齢福祉年金を不正に受給した詐欺容疑で警察から事情聴取を受けている男は、なぜか数冊のはがき大の日記帳を任意提出していたこ…

「道々の者」への挽歌

朝日新聞(夕刊)2010年8月23日 この死亡記事が目にとまった。「『大衆演劇の殿堂』と呼ばれる芝居小屋『嘉穂劇場』」の言葉に惹かれたのだろう。以前読んだ「道々の者への挽歌」である沖浦和光の『旅芸人のいた風景』を思い出していた。 旅芸人のいた風景―…

舟の家/廓舟(くるわぶね)

螢川・泥の河 (新潮文庫) 宮本輝の小説「泥の河」(1977年)に舟の家に暮らす家族が登場する。昭和30年代の民俗、風俗、特に家船(えぶね)への関心から久しぶりに読み返した。読んでいるうちに小説の力、あるいは物語る視点が気になり出して、民俗、風俗的…

家船(えぶね, Sea Gypsies or Sea Nomads)

風の王国 (新潮文庫)作者: 五木寛之出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1987/04/28メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 9回この商品を含むブログ (21件) を見る かつて五木寛之の『風の王国』を読んだ時に、その参考文献一覧を見て、これはサンカ研究書並みじゃ…

リオの水害に思う

サンパウロ在住の写真家・楮佐古晶章(かじさこあきのり)さんの写真日記(『南米漂流』)では、昨年11月あたりからブラジルの異常気象、大雨、土砂崩れによる被害の記事が目についていた。最新の4月5日の日記も「続く雨」というタイトルだった。今日の夕…

原罪の思想:緒方正人の闘い

昨日の朝日新聞朝刊に、「水俣病問題 『個の責任』に立ちかえれ」と題された緒方正人(おがたまさと)さんによる長文の意見広告が掲載された。緒方正人さんの思想と行動に深く感動した。 緒方正人「水俣病問題 『個の責任』に立ちかえれ」(2009年6月18日朝…

「合同」と「仲間」

大阪あいりん地区(釜ヶ崎)で生活困窮者の支援活動にかかわる川浪剛さん(48歳、真宗大谷派の僧侶)はこう語る。 みなさんにお聞きすると、死んだら「たましい」はどこへ帰るのだろう、と切実に感じておられる。多くの人は家族や故郷とも関係が切れてしまっ…

「終(つい)のすみか」と「身寄り」

[ 日付失念^^; 先週、朝日新聞の社会面の片隅に「群馬『たまゆら』火災の背景」(上、下)と題された記事が二日連続で掲載された。「上」の見出しは「劣悪施設 目つむり紹介」、署名は石村祐輔、佐々波幸子。「下」の見出しは「終のすみか探るNPO」、署名は…

生きている人の寺:生活保護へのベースキャンプ

「生きている人の寺」(朝日新聞2009年4月14日夕刊) 新聞の小さなコラムが目にとまった。社会の底が抜けて、生存権さえ奪われた人々が増える中、最低限の衣食住を無償で提供し、「生活保護へのベースキャンプ」になっている寺があるという。在家の僧侶の真…

コンドイ・ビーチの水牛たち

最近、作りっぱなし、売りっぱなし、使い捨て放題、切り捨て放題のこの国の現実ばかり見ていたせいか、なんと水牛が人間と一緒に観光案内の仕事をしている土地があるのを知ってとても嬉しかった。 花咲きみだれる琉球古民家の集落を歩く 木陰で休憩中の水牛…

日本列島の素顔はゴミ列島

日本のゴミ―豊かさの中でモノたちは (ちくま文庫)作者: 佐野眞一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1997/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (5件) を見る 一昔以上前に書かれた本書を読んで、戦慄した。自分が生まれ育ち、現在も…

高齢者の「漂流」、若者の「逆流」

左:「朝日新聞」3月21日、右:同3月22日 暗澹たる気分になる。10人が亡くなった群馬の高齢者専用施設の火災は、専門家が指摘する急増する無届け施設の「ヤミ市場」的実態、国や行政の無策を露呈させただけでなく、また、改めて老後の不安を喚起させたにとど…

本の死を語り、本の復活を示す本

asin:410131635X, asin:4101316368 まるで死体のように、人目につかない場所で炎上する本、人目につかない場所に打捨てられた本。ちょっとやり過ぎのような気がしないでもない新潮社写真部の広瀬達朗撮影の意味深な写真が表紙を飾る佐野眞一著『誰が「本」を…

ドキュメンタリー映画『未来世紀ニシナリ』

『未来世紀ニシナリ』(2006年/68分)予告編(上映予定情報入り) 監督・脚本:田中幸夫/山田哲夫 製作:フルーク 面白そうだ。観たい。 釜ヶ崎、あいりん地区、ドヤ街、部落、在日、・・・・・ かつて負のイメージで語られることの多かった西成。 今、この…

棄民

昨日の朝日新聞朝刊の「私の視点」で多田富雄はリハビリ医療をめぐるこの国の棄民政策の酷さを怒りを懸命にこらえながら訴えていた。「棄民」という言葉に気持ちがささくれ立つ。 声を上げることができない脳卒中患者が行政から見放されている。「医療の効率…