Teresa of Ávila

ジョナス・メカスは10月1日の日記に、題名も何の説明もなく一枚の絵を上げた。



Jonas Mekas' Diary, October 1, 2011


荒野の殉教地を探すアビラの聖テレサ(Teresa of Ávila, March 28, 1515 – October 4, 1582)の絵。杖をつき、頭陀袋を持ったテレサが川向こうの廃墟のような町を背にして荒野を行く図。頭部に後光が差し、やや上方を向いた視線は寒々しい景色の外部に向けられている。それは楽園の断片を偏愛し続けてきたジョナスの心象風景でもあるに違いない。机の前の壁にでも貼ってあったのだろうか、上部にはテープの痕が見える。実は、この絵に描かれたテレサの姿が、私がその存在に気づいてから十年以上にわたって、毎日朝から晩までかなり広範囲に当てもなくただ歩きつづけているようにしか見えない不思議な小母さんの印象と重なったことがきっかけとなって、三日前に「踊る婦人の肖像」を書いたのだった。