ジョナス・メカスのボレックスの思い出


 The Story of My Five Bolexes, Jonas Mekas' Diary, September 24, 2012


ジョナスは痩せたかな。少し前には頬がふっくらとしていたが、昨日アップされたビデオにちらりと写った彼の顔は頬がこけていた。「五台のボレックスの物語」と題したそのビデオでは、1949年に大戦後のヨーロッパからニューヨークにやってきたばかりの頃に、22番街の店で買った最初の、一台目のボレックスにまつわる逸話から楽しそうに語り始める。友人に貸したはいいが、原子力船を撮影するために手漕ぎボートで接近した彼はそのボレックスを海に落としてしまった。それ以来動かなくなったという。さらに、二台目、三台目、四台目、そして五台目と、それぞれのボレックスにまつわる逸話を本当に楽しそうに語るジョナス。三台目はものすごく忙しいボレックスだったと言う。というのも、映像作家組合を作った頃はムービーカメラが少なくて、多くの友人がこれを借りて名作を撮ったんだと述懐する。スプリング巻上げハンドルでスプリングをいっぱいまで巻上げて見せ、一巻きで18秒だと説明する。もう動かない一台目を含めて五台のボレックスをジョナスは手放すことなく、こうしてときどき慈しむのだろう。1989年にビデオに切り替えたんだと明言しているが、自分にとってその五台のボレックスは「小さな家族」だと言い切る。半世紀にわたって彼ととともに、彼の切り離せない一部として生きて来た「小さな家族」。いい話だった。


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