ドキュメンタリー以前

ジョナス・メカスの日記に、ジェフ・パーキンスと一緒にオーグスト・ヴァルカリスの仕事場を訪れたセバスチャン・メカスの「ビデオ・ポストカード」がアップされた。


エレベーターのない古いアパートの上階に彼のアトリエはある。倉庫のようにも見える寒々とした部屋の壁や床や棚の上には大小の絵画作品や何らかの作品になる途上の石や骨や鳥の死骸など多種多様な拾い物が独特の秩序の中に所狭しと配置されている。中でも小さな一室が鳩の部屋になっているのには驚いた。彼が二人に紹介する真っ白な鳩の美しいこと。最後には生後一月半のまだ飛べない雛鳥をまるで親鳥のように愛撫するヴァルカリスの姿が印象的である。


父親ジョナスの撮るものよりは揺れも震えも少ないが、独特の柔らかいタッチが印象的な息子セバスチャンの撮ったビデオを見ながら、ジョナス・メカスが機会あるごとに語ってきた「映画日記」あるいは「日記的映画」、すなわち、生の現実により深く触れる映像の記録ということを改めて考えていた。いわゆるドキュメンタリーにさえ一種の<嘘>があることを鋭く突くような映像のあり方について。


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