ジョナス・メカスによる365日映画、4月、113日目。
Day 113: Jonas Mekas
Monday April. 23rd, 2007
5 min. 33 sec.
Peter Hutton has
a show at
Anthology. We talk
about color blindness.
アンソロジー・フィルム・アーカイブズのオフィスで、上映会を控えたピーター・ハットンを囲んでの雑談。ハットンの他には、メカス、素性不明の眼鏡の女性、まだ中学生くらいのハットンの娘メノースが椅子に座り、もう一人素性不明の男性ジェームズが部屋の入口に立ったままだ。撮影者は不明。これから上映するハットンの映画について、時間は8分だとか、打ち合わせのような会話があってから、ジェームズがハットンの映画が白黒であることに言及すると、「実は俺は色盲なんだよ」とハットンが告白する。「あら、まあ」と眼鏡の女性。「本当か、どんな感じか話してくれないか」とメカス。結構きついこともあったし、カラーフィルムをプリントしたときは災難だったと語るハットン。メカスは色盲であることはそんなたいしたことじゃないと言いたげで、ジョージ・マチューナスも色盲だったと語る。「でも信じられなかったよ。だって、素晴らしい色使いなんだから。彼のデザインはどれも素晴らしい色だった。傑出していた。」
しばし、色盲談義とハットンの色当てゲームが続く。眼鏡の女性が言っているように、色盲には程度がある。彼女の父親は完全な色盲だったらしいが、ハットンに向かって、あなたはそうじゃないと言う。ハットンは娘に促されて、壁の絵の色を言い当てるが、白地に単独のオレンジや黄色や緑色は分かるという。分からないのは緑の中の茶色、緑の中の青、そして時々灰色の中の青だという。メカスは「本当に、本当に、深刻な問題なのか?」という。「ジョナス、冗談じゃないんだよ」とハットン。眼鏡の女性は、オリバー・サックス(Oliver Sacks, 1933)の視覚障害者に関する本の中の逸話を紹介する。事故の後、色覚を失って、残りの人生を灰色白黒の世界を生きた人物がいた、と。「だから、どうなんだ?お前は何もわかっちゃいない」とメカスは言わなかったが、言いたげな表情だ。私たちはすでに、2007-01-19「盲目の写真家ユジャン・バフチャル」で、色盲どころか盲目の写真家の存在を知っている。心の目が豊かな色彩で世界を見ることを妨げるものは何もない。そうメカスは言いたいに違いない。
「そろそろ時間だ」と言って立ち上がるハットン。別室でメカスとハットンとメノースが壁を見ながらなにやら楽しそうに会話している。通りに落ちていたものだという。「信じられない。本当か?」とハットン。「拾って来たんだ」とメカス。ハットンはメカスに娘と一緒のところを写真に撮らせてくれと頼む。「オーケー。」壁に貼られたメカスが拾って来たものとは、こんな「作品」だった。
アンソロジー内の薄暗い劇場のステージに登場するハットン。これから彼の映画が上映されるところで今日のフィルムは終わる。
実験的映像作家、撮影監督として著名なピーター・ハットン(Peter Hutton, 1944-)に関してはwuemme experimental filmのMarch 25, 2005に要を得た紹介がある。彼の映画はサンフランシスコにある前衛的実験的映画に特化したCanyon Cinemaから17本が配給されている。その内2本だけがカラーで、残りはすべて白黒無声作品である。
YouTubeには毎年カナダのオンタリオで開催される「実験映画とビデオアートの国際フェスティバル」であるMedia City 13での2007年2月17日「ピーター・ハットン回顧上映会」後の討論会のビデオがアップされている。
Media City 13 - Peter Hutton Part 1
Media City 13 - Peter Hutton Part 2