真夜中の鴉




真夜中頃、急に嗄れた鴉の鳴き声がひっきりなしに聞こえ始めた。カーテンを開けて窓の外を見ると、鴉の一群がわが家のすぐ上、雪の夜空を飛び交っている。体温の低下を防ぐためなのだろうか、理由はよく分からない。そのうち目の前の電線に次々と止まり始めた。まさか電線が暖かいはずはないと思いながら、鴉の様子を眺めた。電線は鴉でほぼ埋め尽くされた。電線に止まれない鴉はわが家の上を旋回しては、電線に止まれる隙間はないか探しているようだった。何かの拍子に、電線に止まっていた鴉が一斉に飛び立ち、窓から見える雪の夜空は鴉で覆われた。ヒッチコックの鳥よりも迫力があった。そして鴉の一群はどこかに飛び去った。