野鳥日記に北狐が


「野鳥日記」帳には、意気込んで購入したものの、結局使わずに終わった1頁1日仕様の2006年版の日記帳を実は<再使用>している。各頁の上部に月日と曜日が印刷されている。2006年と2013年とでは、曜日が2日後ろにずれるので、曜日の部分を修正しながら使っている。例えば、2006年の1月5日は木曜日だったのを土曜日に修正するわけである。ところが、ついつい2006年の今頃は何をしていたかと追憶に耽ってしまうせいで、2013年の記録の隙間から2006年の記憶が断片的に浮かび上がってくる。多重露光の写真のような趣きを呈し始めた「野鳥日記」帳である。


「野鳥日記」5日目。なんと北狐(きたきつね)を記録することになった。正午少し前のことだった。ふと窓越しに裏山の冬木立を見やると、北狐が一匹樹々の間の雪の上を抜き足差し足忍び足で縫うように歩いているのが目に入った。肉付きがよく、濃い茶褐色の毛が印象的だった。近所で北狐を見るのは何年ぶりだろうか。写真を撮っておこうとカメラを準備するのに目を離していた隙に、時間にしてわずか数秒の後には、北狐は姿を消していた。貴重な例外として「野鳥日記」にそれを記録しておくことにしたわけだった。肝心の野鳥に関しては、午後2時頃に買物から戻った時、裏山で四十雀(しじゅうから)の鳴き声と木を突く小さな音を聞いた。いくら目を凝らしてもどちらの姿も確認することはできなかった。その後、隣の廃庭の立ち枯れた白樺のてっぺんに五十雀(ごじゅうから)が飛来するのが窓越しに見えたが、よく見ようと顔を窓に近づけた瞬間に飛び去った。