With Taylor Mead, October, 2009, Jonas Mekas' Diary, May 16, 2013
5月16日、ジョナス・メカスのダイアリーにテイラー・ミード(Taylor Mead, December 31, 1924–May 8, 2013)を追悼するビデオがアップされた。それを見るまでミードが亡くなったことを知らなかった。ビデオの表題に「2009年10月」とあるのがかすかにひっかかり、まさかと思って調べてみると、なんとミードはつい先日の5月8日に脳卒中で亡くなっていた。1922年生まれのメカスより2歳下の88歳だった。意外だったのは亡くなった場所がマンハッタンではなくデンバーだったことだ。
「ローワー・イースト・サイド (LES: the Lower East Side) の生きた伝説」とか「アンダーグラウンドの偶像 (Icon)」と称えられてきたミードは、30年間暮らしたローワー・イースト・サイドのラドロー・ストリート(Ludlow Street)にある安アパート(Tenements)の一室を今年の4月に追い立てられて、デンバーに引っ越したばかりだった。家主のベン・シャオウル(Ben Shaoul)との間に揉め事が絶えなかったらしい。長年、深い愛着を込めて「home」と呼び慣らわしてきた部屋を失ったミードの落胆は想像に余りある。彼の本当の死因は「lost home」だったような気がしてならない。
女性ジャズシンガーの歌声が低く流れるレストランで、昔話や世間話に花を咲かせるミードとメカスの二人。ビデオの中でミードは話し、笑い、食べ、生きている。メカスにはよくあるように、カメラはミードの方に向けてテーブルの上に置いたままだ。固定されたローアングルからミードの表情の変化がよく見える。ミードは時々思い出したようにカメラに目を向けるところが面白い。メカスは最後にゴソゴソと音を立てて、カメラを反時計回りに回転させ、窓の外に向けようとするが、手前のテーブルの上に置かれた大きなグラスに荒っぽく生けた5本のマーガレットが画面いっぱいに映る。計らずも、献花のようではないか。
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