極力活字を排して、各種の写真、新聞や雑誌の記事や広告の切り抜き、自分や家族や友人の手書きの手紙などが印刷されたスクラップブックのような60ページ余りの薄い本に、「音の日記(sound diary)」と呼べるような日々の暮らしの中の様々な音声の断片を51のサウンドトラックとして収録した合計70分余りのCDが付いている。いや、CDに薄い本が付いていると言うべきなのかもしれない。いずれにせよ、メカスのあるがままの人生、あるがままの生活の全体に通じる複雑な手触り感が濃厚に漂う魅力的な「セット」である。
メカスのペトラルカへの思い入れの強さについては、かつて365日映画の伴走の中で、何度も触れた。
4月6日の金曜日は、復活祭(Easter)の前の金曜日でキリストの受難記念日、短く受難日または聖金曜日(Good Friday)と呼ばれる。ペトラルカが初めてラウラに出会った日と、その日から21年後にラウラが亡くなった日はともに偶然にも4月6日の聖金曜日だった。
伝えられるところによれば、1327年4月6日金曜日ペトラルカはサン・クレール礼拝堂のミサでラウラを見初め恋に落ちた。人妻のラウラとの恋は普通の意味では実らなかったどころか、まともに会った形跡すらない。そして21年後の1348年4月6日金曜日ペトラルカはラウラの死の報せを受ける。ペトラルカは1327年からラウラの死後も40年以上にわたって、ラウラに捧げる366の愛の詩を書いた。
Passion, Francesco Petrarca:365Films by Jonas Mekas(2007年04月06日)
ラウラの死によっても中断されることのなかったペトラルカのラウラへの「ラブレター」に匹敵する映画を撮り続けることがメカスの密かな信念であり続けているのかもしれない。
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