『ウェブ進化論』を読む5:ウィキペディア(wikipedia)の「信頼性」

受講生の皆さん、こんにちは。

今回は、

1)標準的情報倫理問題4をやりました。もうこのレベルの知識は大丈夫そうですね。

2)個人情報保護法(2005.4.1全面施行)の解釈を巡る混乱と過剰反応に関する新聞記事(朝日2006/6/7朝刊)を材料にして、学校や病院で目立つ過剰反応による萎縮現象(「出し渋り」)の背景には、法律の中身に関する無知と「まず保護を」という発想があること、そして実際には、いわゆる「個人情報」の「第三者への提供」が原則禁止されるのは、五千人分を超える個人情報を保有する団体などの「個人情報取扱事業者」であり、5千人以下の自治会なら法律違反にはならないことなどを確認しました。ただし、そもそも「個人情報」そのものの範囲が不明瞭であるという根本的な問題があり、現実的にはそれぞれの現場で柔軟に対応できる「ガイドライン」をモラルにも配慮しながら整備していくしかないでしょう。

3)現在グーグル社のエンジニアリングディレクターを務めるマグラスみづ紀さんへのインタビュー記事(「July 2006 Forbes/Japan」)を紹介しました。中身の解説はしませんでしたが、これまでの講義の復習にもなりますから、必ず読んでおいてください。そして一般には全く知られていない「検索技術」の開発の壮大さと深さ、精度の高い検索を実現する「Page Rank」のしくみについて再確認を。

4)資料「『ウェブ進化論』を読む5:オープンソース現象とマス・コラボレーション(前半)」を使って、一般にはほとんど知られていない「オープンソース現象」の諸事例(「コレラ治療プロジェクト」、MIT「オープンコースウェア」プロジェクト、ブッククロッシング(Book Crossing)、ウィキペディア(wikipedia))から、従来の「企業組織」では実現不可能なプロジェクトのそれぞれの特徴、成果、問題点(限界)と可能性を知りました。「コレラ治療プロジェクト」と「ウィキペディアWikipedia」に興味を覚えた人が多かったようです。事例をどう評価したらよいか、その最も重要な考え方の基準は、プロジェクトに占める「現実世界とネット世界の比重」にあります。三上研究室の方にも書いたように、百パーセントネット世界のウィキペディア(wikipedia)が実現しつつある成果を、特にその「信頼性」の観点からどう評価すべきか、が今回の最大のポイントです。ここは意見の分かれるところでもあり、梅田氏も慎重に議論を進めていますが、従来の固定的な「信頼性」観念が揺らぎ始めていて、新しいフレキシブルな「信頼性」のモデルが生まれつつあることは確かだと思います。