今回は『ウェブ進化論』の「第5章オープンソース現象とマス・コラボレーション」を参照しながら、ネット世界で生まれた人間の新たな行動原理の可能性に迫ります。三上研究室の情報倫理「08オープンソース現象とマス・コラボレーション」に、そのポイントは書いてあります。
リナックスOSの大成功以来、大潮流となったソフトウェア世界の「オープンソース」の思想をインターネットそして現実社会に応用する試みを「オープンソース現象」という。つまりは、「組織に属さなくても、一人一人異質な個人がそれぞれの持ち味を発揮し、全体として大きな達成を成し遂げることができる協力体制(マス・コラボレーション)」のことである。『ウェブ進化論』第5章で梅田氏はそもそも「人はなぜ動くのか」という哲学的な問いをベースに据え、「コレラ治療プロジェクト」、MIT「オープンコースウェア」プロジェクト、ブッククロッシング(Book Crossing)、ウィキペディア(wikipedia)のような従来の「企業組織」とは異質な「マス・コラボレーション」の意義、可能性、そして限界を「リアル世界」との関わりの観点から詳細に検討する。今や「コストゼロ空間」とみなされる「ネット世界」のマス・コラボレーションとして注目すべきウィキペディア(wikipedia)は成功事例とみなすべきか否かに関する梅田氏の議論は、従来の「信頼性」という基準そのものが静かに変容し始めている驚くべき事実を明るみにだす。
今回はそれに『フューチャリスト宣言』の随所で谺する「フリーの思想」に関わる「無料/自由」という観点をめぐって、前回の講義のポイントだった「ブログの効用」も引き合いに出しながら、補足、敷衍する予定です。
百パーセントネット世界のウィキペディア(wikipedia)が実現しつつある成果を、特にその「信頼性」の観点からどう評価すべきか、が今回の最大のポイントです。ここは意見の分かれるところでもあり、梅田氏も慎重に議論を進めていますが、従来の固定的な「信頼性」観念が揺らぎ始めていて、新しいフレキシブルな「信頼性」のモデルが生まれつつあることは確かだと思います。
と書きましたが、今回は私自身の体験を踏まえて、ウィキペディアの日本語/英語間の温度差についてもお話する予定です。
最後に、「情報倫理標準問題6」もやります。三上研究室のLinksにある、「著作権法入門」、「個人情報の保護に関する法律」、「個人情報保護法対策ポータル」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」に早めに目を通しておくようにしてください。