今朝の散歩は、明確な目的をもったフィールドワークような散歩だった。目的は二つ。
一つは新たなシラタマノキを見け、実と葉の様子がよくわかる写真をとること、二つ目は、新たな種類のマンホールの蓋を発見することだった。そのために、いつもの散歩コースからはずれ、道路に面した庭つきの家が多い路を歩いた。風太郎にとってはいつも以上に嗅覚スポットの少ない詰まらないコースだった。
あった。やっと一つ見つけた。が、やはりすでに葉は枯れかかって、実も散在している。それでもできるだけ生きの良さそうな葉を接写した。
これを以下のネット植物図鑑の写真3枚と改めて比較してみた。
植物写真家・鈴木庸夫氏による『植物図鑑』の「シラタマノキ」の写真。
これは実がまだ莢(さや)に覆われている状態で、それが外れると白い丸い実が現れるらしい。が、葉を見るかぎり明らかに「違う」。
群馬大学の統計学の先生らしいAOKIさんの『植物園へようこそ!Botanical Garden』の「シラタマノキ」の2枚の写真。
その二枚にしてからが、「同じか?」と思わせるに十分なくらいの葉の違いがあるのだが、上の私が撮影した葉と比べると、どちらとも葉そのものも、実のつき方も「違う」と感じてしまう。下の写真に写っている葉は、鈴木庸夫さんの『植物図鑑』の写真のもに似ている。
ふーっ。
動植物には「個体差」がある。同じ秋田犬だって、様々な程度の変異がある。それと同様に、同じシラタマノキでも、このような個体差があると考えるべきなのだろうか。生育環境による変異もあるだろうし、自然交配による変異もあるのかもしれない。そして園芸用に品種改良される可能性もあるのではないか。
不図、学名が気になった。
鈴木さんの「シラタマノキ」には「Gaultheria pyroloides」と記載されているが、AOKIさんの「シラタマノキ」には「Gaultheria pyroloides var. miqueliana」とある。んんん?「Gaultheria pyroloides」までは共通だが、AOKIさんのには「var. miqueliana」がくっ付いている。
そこで、これは、命名に深い謎があると直観した私は、昔勉強したはずが、すっかり忘却の彼方に消えてしまった生物分類学の基礎知識をちょっと調べてみた。
生物(動植物)の学名(種の名前)は、18世紀スウェーデンの植物学者リンネが考案した「属名+種小名」のラテン語二語による「二命名法」が国際標準になっている。リンネは「(近代)分類学の父」とも言われるが、生物の名前(学名)とはすなわち生物の分類、カテゴリー化を意味する。彼の主著のタイトルはそのものずばり『自然の体系』だった。彼は生物の世界を「体系化」するのに相応しい名前の付け方、いわば「タグ付け」を考案したといえる。リンネの分類体系はその後修正や精緻化をへて現在にいたるが、その基本的アイデアは受け継がれている。つまり生物の「違い」を良く知られているように、…、綱、目、科、属、…のように上位分類から下位の分類にいたるまでの「階層構造」をなすように体系化するという発想である。
そのような科学的な命名法に照らしたとき、私が直面している「シラタマノキ」問題はどうなるか。
鈴木さんの「シラタマノキ」=「Gaultheria pyroloides」の場合、属名「Gaultheria」、種小名「pyroloides」で終わりだが、AOKIさんの「シラタマノキ」=「Gaultheria pyroloides var. miqueliana」の場合、後ろにさらに「var. miqueliana」がくっついている。「var. 」は変異(variation)を表し、「miqueliana」が変種名になるという。変種名の他にも亜種名や品種名、園芸品種名もあるらしい。
ちなみに、普通「種」といっているのは「属名+種小名」のことで、「種小名(specific name)」とは、同じ「属」の中での違いを特定する名前だそうだ。ただし、同じ「種小名(specific name)」は異なる「属」にクロスオーバーすることがある!ということは厳密な階層構造は崩れている!考えてみれば、当然だろうな。自然のいわば無限の複雑さを人為的形式的な分類によって完璧に押さえ込むことなんてできるわけがないんだから。
少し見えてきたぞ。
日本語名(和名)の「シラタマノキ」ってやつが曲者だったのだ。「シラタマノキ」という名前は実はかなり大ざっぱな分類上の名前に過ぎず、植物分類学的には「Gaultheria pyroloides 〜」の「〜」の数だけ「シラタマノキ」は存在するということだ。だから、鈴木さんの「シラタマノキ」は学問的には「Gaultheria pyroloides A」と「A」が付くのかもしれない。そしてAOKIさんの二枚の写真に写っている「シラタマノキ」は「Gaultheria pyroloides B」と「Gaultheria pyroloides A」なのかもしれない。
そして、そして、私の見た「シラタマノキ」は「Gaultheria pyroloides C」なのかもしれない。
(つづく)
***
ところで、今朝の散歩では新たなマンホールの蓋仲間を発見し、撮影した。
札幌市のシンボルマーク「時計台」と「鮭」が描かれていた。知らなかった。
これは有名な「NTT」。
なんと細かい分類「雨水」とある。
さらに「おすい(汚水)」!
今朝の藻岩山には「傷」を覆うように再び雪がつもっていた。