ジョナス・メカスによる365日映画、33日目。
Day 33: Jonas Mekas
Friday February. 2nd, 2007 2 min. 50 sec.
Ornette Coleman
practices in his
studio.
オーネット・コールマン
スタジオでの練習風景。
ジャンルを問わず、メカスは「前衛avant-garde」に暖かいまなざしを注ぐ。フリージャズの歴史そのものであるオーネット・コールマン。1930年生まれ、77歳のアルト・サックス奏者は今もって人生の「前衛」を生きている。それは黙々と練習する姿に現れている。練習とはいえセッション相手の若いピアニストの必死ぶりもまた印象的である。その必死さを引き出す凄みがオーネット・コールマンの「音」にはある。
YouTubeをはじめ、ネット上には"Ornette Coleman"に関する情報はたくさんある。そんななかでフリージャズ(の創始者)という文脈を超えて刺激的だったのは次の二つ。
(1)『裸のランチ』オリジナル・サウンドトラック/ハワード・ショア+オーネット・コールマン - バロウズの圧倒的な喪失感が生み出す幻想世界と共鳴する音楽
http://c-cross.cside2.com/html/g10ha003.htm
その中の次の記述は示唆に溢れていて、大変興味深い。
オーネットは、73年1月、モロッコの山間部にある村ジュジューカを訪れ、古来からの音楽の伝統を守りつづけ、民族楽器を演奏する地元のミュージシャンたちと出会った。バロウズの長大な評伝『Literary Outlaw』のなかには、こんな記述があるのだ。
「ジュジューカでは年に1回、牧羊神のお祭が行われ、これは、バロウズが通う行事でもあった。特別のアトラクションでは、偉大なジャズ・サックス奏者オーネット・コールマンが熟達した演奏家たちのテクニックを学ぶために登場し、彼らと共演することになっていた。[中略](演奏家たちに)オーネットが加わり、拮抗するハーモニーを作り上げたとき、バロウズには、自分が、2000年間生き続けるロックン・ロール・バンドを聴いているように思えた。カルタゴの時代から続く音楽とモダン・ジャズ、ふたつの表現が出会ったとき、音の新しいフロンティアが誕生したのだ」
しかも、オーネットとバロウズの接点はそれだけではない。バロウズやビートに多大な影響を受けたアメリカ人の監督コンラッド・ルークスが66年に作った『チャパクア』というドラッグ映画がある。この映画には、バロウズがギンズバーグとともに出演している。監督のルークスは、オーネットにこの映画の音楽を依頼し、オーネットは、2管編成のカルテットと13人の管と弦のアンサンブルという大編成による音楽を作り上げた。ところが、ルークスはそれを使うことを躊躇し、結局、他のミュージシャンに音楽を依頼し、オーネットのファンのために音楽をレコード化する話を持ちかけた。その幻となった映画音楽が『チャパクァ組曲』なのだ。
意外なリンクとしては、「牧羊神のお祭」は以前紹介した映画「パンの迷宮」に遠く繋がっている。
(2)「オーネット・コールマン・トリオ:デヴィッド、モフェット、オーネット」&「ローランド・カーク&ジョン・ケージ:サウンド??」(原題「David, Moffett and Ornette: The Ornette Coleman Trio、SOUND?? Rahsaan Roland Kirk and John Cage」) - SAMPLE MOVIE
http://www.nowondvd.net/products/coleman/
これは、MUSIC DVDのサンプル・ムービーで、前半がオーネット・コールマン、後半がローランド・カークのドキュメンタリー。後半にジョン・ケージが登場する。