ジョナス・メカスによる365日映画、3月、87日目。
Day 87: Jonas Mekas
Wednesday March. 28th, 2007
4 min. 12 sec.
A requiem for a
broken tree, Sutton
Street, near Driggs,
Brooklyn. The tree was
waiting for the Spring--
折れた木
のための鎮魂歌、
ブルックリン
のサットン・ストリート
とドリッグズ・アヴェニュー
が交差する辺り。
その木は春
を待ちわびていた--
幹が鋭角に折れ曲がって、頭を舗道にのせたまだ若く見える濡れた街路樹。雨上がりの朝のようだ。メカスの鼻歌のレクイエムが聞こえる。右手がカメラの下から伸びて、たくさん芽吹いたばかりの枝にそっと触れる。芽には雨の雫が涙のように見える。色んな角度からその無惨な姿をしっかりと見つめるカメラ。"DEPT OF PKS"*1という小さな青い札が付けられている。鼻歌の鎮魂歌にアコーディオンの伴奏が入る。昨夜は暴風雨だったのだろうか。折れたのはそのせいなのか。しかし、幹の折れた部分の下には樹皮が削られたような不自然な痕が見える。根元にはその削り滓のような樹皮の断片が沢山落ちている。
同じ生命としての共感と尊敬から、メカスは木を心底慈しむ。木といえば、世界樹(World tree)、宇宙樹(Vortical tree, Yggdrasil)、生命の樹(Tree of Life)、知恵の樹(Tree of Knowledge of Good and Evil)、日本でも中国伝来の七夕(Tanabata)、等と神話的、宗教的宇宙観*2の知識の連想は尽きないが、日常出会う木々を慈しむことができているかどうかの方が重要だと思う。庭や街路の樹木がどう扱われているかで、そこで生活する人間の知性の有無や深さは測られるだろう。
メカスの母国リトアニアには伝統的な工芸として樹の十字架(crossmakers)があることを初めて知った。