John McGettrick, Boris Lehman:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、11月26日、330日目。


Day 330: Jonas Mekas
Monday, November 26th, 2007
5:09 min.

something about
hard times...
John McGettrick,
Boris Lehman,
autumn---
sketch ---

辛かった時期
のことについて...
ジョン・マクゲトリック、
ボリス・レーマン
秋...
スケッチ...

アンソロジーのエントランス・ホールで立ったまま、インド系の若者と、静岡からやって来たという日本人の若者を前に、辛かった時期について語るメカス。「私はリトアニアの非常に貧しい地域の出身だ」と言って固く目を瞑る。「そこで育った。貧乏だったが、不平は決して言わなかった。歌ったもんさ」と笑顔を一瞬見せる。そして、満足を知らず不平をこぼす金持ちの二人の男のたとえ話をして、不平をこぼしちゃいけない、不平をこぼすことが人を蝕むんだと教訓を述べる。

インド系の若者が語る。「物事の狭間に美しいものが生まれる瞬間ってあるよね。路上生活する貧しい人にも、例えば、笑顔」。「そうだ、そうだ」とメカス。「その通り」と日本人の若者。残念ながら、逆光で日本人の若者の顔はよく見えない。そこにちょうど見事な口髭をたくわえたジョン・マクゲトリックがやって来て、挨拶、紹介が始まる。

(ホールでしばらく歓談した後だと思われる。)アンソロジーの入口前の歩道で、マクゲトリックが「ありがとう、ジョナス」と言い残して立ち去って行く。マクゲトリックの後ろ姿をずっと撮りながら、そこにちょうどやって来たベンに向かって、「マクゲトリックはレッド・フック(Red Hook)の事実上の"長"(Mayor)さ」とメカス。「彼はこの建物を手に入れるときに助けてくれたんだ。一緒に計画を練ったんだよ。」ジョン・マクゲトリックは職業は探偵だが、レッド・フック地区の市民活動家のリーダーとして知られる。「自転車ハンドルのような口髭」でも有名なダウンタウンの名士。

ベルギーの独立映画監督兼俳優のボリス・レーマンとレストランで過ごすメカス。レーマンが隣に座るメカスに向かって「君?」、そらからテーブル上のカメラのレンズを覗き込んで「君?」と、どっちが本当の君なんだ?とふざけている。そこにメカスも加わって、レンズを覗き込んで、悪戯っぽい表情を浮かべる。さすが、映像の一種のパラドクスを弁えている二人ならではの振る舞いである。レーマンはなおもしばらくじーっとレンズを見つめる。私が見られているような気分になる。私は映像をカメラの視線で一方的に見ることが当たり前になっていることを痛感する。メカスが今日は11月15日だ、と言う。レーマンは日付変更線を跨ぐ旅をしてきた直後なのか、腕時計を外してメカスに見せながら11月16日だよ、と言う。混乱しているかも、とメカス。私も、とレーマンレーマンは鞄からカレンダーを取り出して日付を確認して、11月15日だね、と言う。映画は、写真もそうだが、基本的に「時間」編集術みたいなところがあるから、何が本当かは分からない。そこがまた面白い。ちなみに、小型のデジタルカメラを持った若い娘が同席している。

強風に揺れる二本の街路樹。風に落ち葉が舞う。歩道には落ち葉が積もっている。秋の映像的スケッチ。その二本の街路樹は、10月2日に紹介された、1967年にメカスがマチューナスと植えた二本の樹のようだ。