太陽と恋に落ちた男 Julius Ziz:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、5月、133日目。


Day 133: Jonas Mekas
Sunday May 13th, 2007
8 min. 42 sec.

Julius admits
he has fallen in love
with the Sun--

ジュリアスは
太陽と恋に落ちた
ことを認める

昨日のフィルムの続き。髭の青年の名はジュリアス・ジズ(Julius Ziz)だと分かる。ベン(Benn Northover)と同じく、アンソロジー・フィルム・アーカイブズに滞在しながら映像制作を行う独立映画監督の一人。「秘密でプライベートな話」と口火を切るメカス。「クレイジーな話だけど、太陽に恋をしたんだ」とジュリアスは話し始める。「ル・ソレイユ(フランス語で「太陽」)?」とメカス。「ウィ」とジュリアス。ジュリアスはフランス出身のようだ。昨日のフランス製のたばこ「ゴロワーズ」もつながった。

ジュリアスは「太陽が沈むところを見て、数百の詩を書いた」と事も無げに語る。「太陽に捧げる詩かい?」とメカス。「そう」とジュリアス。「なぜ日の出じゃないんだ?」とメカス。「島では日の出は朝5時だからね。起きるのは辛いよ。」とジュリアス。ちょっと間があってから、海を話題に持ち出したベンに対して、「海に捧げる詩も百は書いたよ」とジュリアス。「自然のなかの色んな出来事とか」とジュリアス。

ベンは幼い頃の体験を持ち出して、日の出の素晴らしさを訴える。特に、夜明けの鳥のさえずりdawn chorusの素晴らしさを。ジュリアスに向かって「百の詩が書けるよ」とベン。黙って頷くジュリアス。乾杯する三人。「太陽と親戚関係にあるんだ」と言って自分で受けているジュリアス。ベンとメカスも大笑い。昨日のベンがオスカー・ワイルドと親戚関係にあるという話題が念頭にある。「太陽に惹かれるとても強い感覚があるんだ」とジュリアス。「島では日没は午後11時半くらい。でもミツバチはまだ働いている。聖なる小さな天使みたいにね」とジュリアン。

ベンが同じようなことは月にも言えると言って、7歳の頃に、窓によじ上って月に投げキッスをしていたら、落っこちて膝を骨折した体験を語る。「へー」と驚きながらも、ジュリアスは月を女性に見立てることに興味がないようだ。「リトアニア語では太陽は女性だが、フランス語ではどうだっけ?ル・ソレイユだから男性か」とメカス。「そうだけど」といいながら、ジュリアスは言語上の「性」の問題にも興味は示さず、あくまで自分のイメージにこだわり、沈んでゆく太陽への愛着を語る。ベンはベンで、太陽は積極的にやってくる存在で、月は受け身というか、神秘的な存在だと自説を述べる。

突然、メカスはカメラを自分の顔に向けて「独白」する。「太陽。私は幼い頃からいつも日の出前に起きたもんだ。大人になってからもいつも日の出前に起きる。いつもそうだ。日没はあまり気にかけない。日の出の記憶を愛している。そして星。夜が運ぶ星。ああ、星。」すると、それに反応したジュリアスは「僕にとって星は最高の存在だ」と語り始める。「決して到達できない美しい存在。太陽はなんていうか、物理的存在感がある。でも星は違う。」

***

自ら「クレイジー」と認めるジュリアス・ジズ監督のマルセル・デュシャンのドキュメンタリー作品がアンソロジー・フィルム・アーカイブズからダウンロードできる。

Silence Sea and Marcel Duchamp
7 min

A film made out of found footage.
Marcel Duchamp playing chess by the ocean with
his wife. Pretending that he is winning but he is
losing.

偶然発見されたフッテージから制作されたフィルムである。
マルセル・デュシャンは海辺で妻とチェスをしている。
彼は勝ちを装っているが実は負けている。

ネット上にジュリアス・ジズに関する個人情報は皆無である。過去の映像作品の断片的な情報があるのみ。