ジョナス・メカスによる365日映画、8月28日、240日目。
Day 240: Jonas Mekas
Tuesday, August 28th, 2007
5 min. 10 sec.
wild strawberries
in Paris!!!
パリで
野生のイチゴ!
メカスはパリの常宿、木賃宿のホテル・ルイジアナの部屋で独りでパック詰めの小粒で不揃いのイチゴを嬉しそうに次々と口に運ぶ。カメラに向かって強い口調で語りかけるメカス。「子ども時代を食べる」って聞いたことあるかな?私は今パリで子ども時代を食べているんだ。多分、楽園の断片を食べている。そう、友よ。今回はあなたに楽園の断片たちを!がっかりしないで。野生のイチゴだ。しかもパリで。(メカスが食べている「野生のイチゴ」はヘビイチゴなどとは違う、小粒ながら栽培種に近いものに見えた。未同定。)
メカスは窓を開けて、通りを見下ろしながら、自分に再確認するかのようにフランス語で言う。"Retour à Paris!(パリに帰ってきたぞ!)"。
場面は替わり、白い小さな花が群生する野原のサイレント映像が15秒間。クローバー(White clover)、和名シロツメクサ(白詰草, Trifolium repens)のように見える。風に微かに揺れている。
場面は替わり、ポートレイト、観葉植物、テーブルの上のよく冷えた白ワインの入ったグラスのそれぞれの映像が断片的に映る。男性ボーカルによる中東の旋律の混じったフレンチ・ポップスが聞こえる。大勢の人の声が一定周波数のノイズに聞こえる。よく冷えた白ワインを一口味わうメカス。
掌状の葉がこんもりと繁った樹の映像。アフリカン・ポリリズムのドラム演奏の音が微かに聞こえる。緩やかに曲線を描く川を見下ろす。川縁の歩道に座り込んでいる人たち、ジョギングする人たちが小さく見える。どこか高所からメカスは撮影している。カメラがズームする。少なくとも8人の若者たちが座りこんでいる。その内の二がドラムを叩いているようだ。カメラはズームしたまま再び木の葉を大きくはっきりと捉える。マロニエ(marronnier)だ。和名セイヨウトチノキ(西洋栃の木, Aesculus hippocastanum)。メカスは自分が今いる場所、リバーサイドに建つアパートメントのバルコニーを、ついで部屋の隅っこの椅子に丸く横たわる猫を撮る。誰のアパートメントかは不明
場面は替わり、混み合って賑やかなカフェのカウンターの中で忙しく働く若者たち。メカスはカウンターでビールを飲む。隣には5月13日のフィルムの中で「太陽と恋に落ちた」ことを告白した、マルセル・デュシャンのドキュメンタリーでも知られる映像作家ジュリアス(Julius Ziz)、そして鼻から下しか映らないが、その声からもベン(Benn Northover)がいることが分かる。メカスは「パリに!」と音頭をとって、皆で乾杯する。