Massimo Bacigalupo reads De Amicis CUORE:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、5月、142日目。


Day 142: Jonas Mekas
Tuesday May 22nd, 2007
6 min. 21 sec.

At the Torino
Book Fair
I suddenly
discover the reason
why I began keeping
a diary ---
Massimo Bacigalupo
reads from De Amicis
CUORE.

トリノの
ブック・フェアーで
私は自分が日記をつけ始めた理由に
はたと気づいた。
マッシモ・バチガルーポ(1947-)は
エドモンド・デ・アミーチス
『クオーレ』
音読する。

室内で、カメラに向かって、日記をつけ始めた理由を尋ねられにつけ、分からない、本当に分からないと答えてきたと語るメカス。子どものとき、気がついたら日記をつけていたという。

数日前にトリノにやって来た。国際ブックフェアのために。突然、突然、思い出したんだ。この本、デ・アミーチの『クオーレ』をずっと前、多分8歳、7歳か、9歳の頃、読んだんだ。そして日記を書かなきゃと思ったんだ。本の中の生徒のようにね。自分自身の日記をつけなきゃと思ったんだ。それが始めた理由さ。それがまだ続いているだ、今もね。映画("Film")の上でね。

車の往来する音が聞こえる。レンガ作りの建物の壁に「フランチェスコ・ペトラルカ通り(VIA FRANCESCO PETRARCA 1304 1374)」と彫られた石か金属製の標識。狭い通り。両側には石造りの低層の建物が並ぶ。

似たような建物に今度は「ダンテ通り」の標識。その下で地図を覗き込むセバスチャンとベン。

窓の柵越しにドイツとリトアニアの旗。トリノ国際ブックフェア*1の会場とすぐに分かる。大勢の客でごった返す会場を俯瞰する。会場の生の音、人々の声の渦が鼓膜に響く。いくつかのブースと、それらの間を往来する大勢の客。「リトアニア」の大きな看板が掲げられたブースもある。セバスチャンは本棚から大判の本を一冊抜き取ってページを捲っている。

会場内のカフェの赤いテーブル席で、見知らぬ女性を相手に何やら話し込んでいるセバスチャン。赤いテーブルの上に件の本、"De Amics / Cuore"が立ててある。手が伸びてきて、「少し読もうか」という声とともに、マッシモの顔が映る。
マッシモはおもむろに、"MARZO / Le scuole serali / 2, gioved?"の冒頭部分を声を出して読み始める。

「グラーチェ(ありがとう)......この本が書かれたのはいつだっけ?、19世紀だっけ?」とメカス。「1896年だよ。」とマッシモ。「1896年か。私は10歳のときこの本を読んだ。そして日記を書き始めた。この本は日記形式で書かれているんだ。」とメカス。「小学生の日記だね。実は最も初期のイタリア映画、無声のイタリア映画のなかにはこの本の中の幼い少年の物語のひとつに基づいているものがあるんだ。少年がイタリアから南米のチリに旅をする。移民の父親を探すためにね。」とマッシモ。「小学生が日記をつけているところがすごく印象的で、惹かれたんだ。」とメカス。

マッシモはジェノバ大学で教鞭をとるアメリカ文学の専門家。若い頃には短編映画を作っている。

***
Wikipediaによれば、

クオーレ(Cuore)はイタリア王国のエドモンド・デ・アミーチスによって1886年に書かれた愛国小説で、彼の代表作である。クオレとも。クオーレとはイタリア語で心(心臓の意味もある)を指す言葉である。日本で「愛の学校クオレ物語」としてアニメ化もされている。
1861年に成立した統一イタリア(イタリア王国)で書かれた本で、子供向けに愛国心を説いた本として広く読まれた。小学3年10歳のエンリーコ (エンリコーとも)少年が新学期の10月から翌年7月までの学校での1学年(10か月)を過ごした日記が書かれている。舞台となるこの小学校は、2006年に冬季オリンピックが開催されたトリノにある。「先生のお話」として、各月にパドヴァ、フィレンツェ、ジェノヴァなどの少年の物語が挿入されている(これらは統一前の各国を代表している)。
その中の一つ、5月の「Dagli Appennini alle Ande」(アペニン山脈からアンデス山脈まで)は「母を尋ねて三千里」などの邦題で独立した物語としても鑑賞され、日本の世界名作劇場シリーズのアニメ「母をたずねて三千里」の原作になっている。

「母をたずねて三千里」は青空文庫で読める。

*1:今年2007年のトリノ国際ブックフェアーは5月10日から5月14日まで開催された。